いつの世も止まらない政治家の汚職…。政治家は世の中のためではなく、自分のため、金のために政治家になったのかと暗い気持ちになりますが、
古代ではどうだったのか。
今回は、律令で、役人の汚職に対する罰について書かれている部分を見ていこうと思います。
※マンガの後に補足・解説を載せています♪
〇汚職に対する罰
◆名例律
32条 贓(財物を受けて法律を曲げる、管理していた財物を自分の物にする、など不当に財物を得ること)・犯禁(私有禁止の物を所有する。私有禁止の兵器・書物[天文に関する図書など]・公印など)は、没収する。権力を盾に得た財物は、元の持ち主に返せ。
◆雑律
逸文 不当に財物を得た者は、布一尺分で笞罪10。一端を増すごとに一等を加える。12端は徒刑1年。この後、12端を増すごとに一等を加える。最高刑は徒刑3年とする。与えた側は5等罪を軽く扱う。
◆職制律
44条 役人は、顕著な功績も無いのに、他人に良い行いをしたと報告させた場合は、杖罪100。贓による場合は、杖罪100を超えるものはそちらの罰で扱う。役人から指示を受けた側は、罪を一等軽く扱う。
45条 裁判官に法を曲げることを求めた裁判官は、笞罪50。裁判官がそれを受け入れた場合は、同罪とする。受け入れなかった場合は、両者とも罪に問わない。法を曲げることを実行してしまった場合は、杖罪100。ことさらに罪を軽くしたり、重くしたりすることが杖罪100を超える場合は、軽くした場合は、与えられるはずだった罪と同じ罰を、重くした場合は、重くした罪と同じ罰を与える。裁判官以外が法を曲げることを求めた場合は、3等罪を軽く扱う。罪人が自ら法を曲げることを求めた場合は、罪を一等重く扱う。役人が法を曲げることを求めた場合は、杖罪100。死罪にあたる場合は、罪を一等軽く扱う。
46条 他人から財物を受けて法を曲げることを求めた場合は、不当に財物を得た罪に二等加える。財物を与えた側は、3等軽く扱う。
47条 裁判官に財物を贈って法を曲げることを求めた場合、法が曲げられた際は不当に財物を得た罪と同じく扱う。法が曲げられなかった場合でも、二等軽くした罰を与える。
50条 監督官が、管轄する地域から財物を得た場合は、1尺分で笞罪20。一端ごとに一等加える。10端で徒刑1年。その後10端ごとに1等加える。70端で近流。与えた側は、5等軽く扱う。監督官が要求して得た場合は、一等加える。無理矢理要求した場合は、1尺分で杖罪70。2端ごとに一等加え、30端で絞刑とする。
52条 監督官が、管轄する地域で財物を借りた場合は、不当に財物を得た罪と同罪とする。100日にわたって返さなかった場合は、50条と同様に扱う。金を借りた場合は、50日で50条と同様に扱う。無理矢理借りた場合は、二等罪を加える。強制的に買い上げた場合は、笞罪50。
55条 監督官が、管轄する地域から財物を集め、人に贈った場合は、自分の物としなくても、50条をもって扱う。
〇実際の汚職の様子
『日本書紀』によると、律令が作られる50年以上前の大化元年(645年)8月5日、孝徳天皇は東国に国司を派遣するにあたって、次の内容の詔を出しました。
「国司は賄賂を受け取ってはならない。法に背いた者は介(次官)以上の場合は冠位を降格させる。それ以下の場合は、賄賂として受け取った分の2倍を罰として徴収する」
その後、大化2年(646年)3月2日、孝徳天皇は次の内容の詔を出しました。
「以前に東国の8カ国に国司を派遣したが、そのうち2人は法に違反した。民を治めるためには、まず自分を正しくしなければならない。慎まなければならない。お前たちが正しければ民は正しくなるのだ」
また、朝集使(役人を審査し、中央に報告する任務を与えられた者)たちに東国の役人たちの様子を確認すると、次の不正の数々が明るみになりました。
・穂積臣咋は、民から物を求めてこれを奪った。
・巨勢徳禰臣もまた、民から物を求めてこれを自分の物にした上に、馬も奪った。次官の2人も、私腹を肥やし、馬を奪った。台直須弥は初めは上官を諫めていたものの、途中から自分も汚職に手を染めるようになった。
・紀麻利耆拕臣は、朝倉君(地方の豪族)から弓や布を取った。
・阿曇連は、官物を私用し、馬も勝手に使用した。次官は国の牧草を自分の物にした。また、国造(地方豪族)の馬を奪い、他の馬とこれをすり替えた。
では、これらの者たちにはどんな罰が下されたのかというと、
なんと、大嘗祭の年にあたっているので大赦(罪を許す)し、国司たちには注意だけを与えたというのですね(;'∀')
うーん、甘い…。
律令後においても、次の事例が見られます。
養老6年(722年)、前周防(山口県東部)国司であった山田御方は官物を盗んだ罪に問われたが、本来は役人をやめさせるところだが、恩赦によって罪を許された、しかし弁償はさせようとしたが、家に一尺の布も無いので、学問に優れた人物であることも考慮して、弁償することも免除することにした…。
これまた甘いですね…。名例律32条がまったく使われていません。
基本的に寛大で、厳罰に処さないことが多いんですよね…。
これは現在も一緒ですが、そうだからこそ罪の意識が低くなって、汚職が跡を絶たないんですよね(-_-;)
ちなみに、現在の刑法では、汚職・横領に関する罰は、次のようになっています(公務員・議員が不当にお金を得た場合は汚職、それ以外の人が不当にお金を得た場合は横領となります)。
197条 公務員が、わいろを受け取ったり、要求したり、賄賂を受け取る約束をしたりした場合は、5年以下の懲役。わいろをもらって依頼を受けた場合は、7年以下の懲役。
198条 わいろを贈った者は、3年以下の懲役・または250万円以下の罰金。
252条 所持していた他人の物を横領した者は、5年以下の懲役。
253条 業務上、所持していた他人の物を横領した者は、10年以下の懲役。
汚職より業務上横領のほうが罰が重いんですね…(-_-;)
戦後最大の汚職事件と呼ばれたリクルート事件では、藤波孝生元官房長官・池田克也元衆議院議員が懲役3年・執行猶予4年、他に事務次官2人と労働省課長が逮捕。
民間側では、リクルート元会長が懲役3年執行猶予5年の判決を受けるなどしました。
が、重要職にあった政治家たちはみな逮捕されず。竹下登総理大臣は内閣総辞職に追い込まれたが、竹下登の秘書は自殺しています。
最近あったキックバック事件もそうですが、大物政治家は罪に問われないんですよね…それでいいのか…。
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