社会って面白い!!~マンガでわかる地理・歴史・政治・経済~: <3>1973年10月4日~11日~「豪華なインフレ・メニュー」

2022年7月1日金曜日

<3>1973年10月4日~11日~「豪華なインフレ・メニュー」

 今もいろんな商品が毎日のように値上げされていますが、

今から50年前の1973年もいろんな物が値上げされていました😥

(マンガの下に「日本のインフレ」の記事の抜粋を載せています)

※日本のインフレ①

「9月中旬卸売物価、前年同月比18.7%高、9月消費者物価(東京都区部)同14.5%高ー。物価上昇は毎月のように朝鮮動乱期以来の記録を書き換えていく。もっとも、物価上昇におしひしがれているのはわが国だけではない。米国、英国、西ドイツ、フランスそしてイタリア…各国も同じ苦悩を味わっている。こういったとどまるところをしらないインフレの犯人としては「米国のドルたれ流しとそれに伴う通貨不安」「世界的なモノ不足」をあげる声が強い。たしかにこうした要因は各国のインフレに大きな比重を占めている。日本のインフレにもこうした側面があるのは否定できない事実である。だが、日本のインフレにはこうした”国際的要因”をさらに加速しているいくつかの力がある。それは政府の財政政策、そしてあまりにも業界サイドに立った産業政策であり、これに甘える財界・大企業である。国民は半ば不可抗力の「世界のインフレ」と「日本のインフレ」をはっきり区別し、日本のインフレの行方を厳しい目で追及していく必要がある。

▽福祉ダウンを嘆く老人ホーム

食べる楽しみは暮らしに欠かせない。まして、老人の場合はなおさらである。ごはん、鳥肉から揚げレモン添え、カボチャ、五目大豆、しばづけ、ブドウ、牛乳。8月某日、東京老人ホーム(東京都保谷市)の210人の老人たちの昼食メニューである。この献立は材料費だけで1人158円44銭かかった。1年前の同じ日同じ献立が127円81銭でできた。なんと24%もの大幅値上がりである。5月1日から1週間の1日3食1人当たり平均食費は335円(朝食52円、昼食158円、夕食125円)だった。ところが”予算食費”は1日223円。国の予算をもとにしたホームの食費の伸び率は、昨年の11%増にすぎないという。食費を確保するために、他の経費を食いつぶすか、それとも泣く泣く食事の質を落とすかーは、老人ホームでなくとも、いま多くの福祉施設が直面している問題であろう。4代目ホーム長の日高登さんは「ことし創立50周年を迎えるというのに、まだ満足な食事にできない。予算の数字だけ見て福祉向上をいっても意味がない。最近の物価高で、実際には福祉ダウンになっている」と嘆くのだ。47年度から48年度にかけては、日本の歴史で画期的な福祉社会の幕開けとなるはずの年であった。しかし、今や”福祉元年”はインフレの大波に飲み込まれようとしている。

▽大蔵省幹部も責任認める

インフレが天馬のように走り出す過程を「相撲に例えれば4場所あった」と説明する比ゆを金融界で耳にした。まず春場所。71年8月のニクソン・ショックで開幕。横綱は政府、日銀のドル買い支え。外貨の見返りに、46年4兆4000億円、47年1兆7000億円の円資金が国内にばらまかれた。これを助けたのが財政。「世直し予算」ということで47年度に積極大型予算を組み、大型補正、財政投融資計画の追加3度とたたみかけた。夏場所。横綱は不況カルテル。大関は日銀、都市銀行の”共犯”による過熱流動性の創造。都銀は企業の借金返済に応じず、46年5兆1000億円、47年6兆7000億円とムチャクチャな貸し出し増を演じた。秋場所。田中内閣の成立と日本列島改造計画が横綱。土地、株式投機の火は燃え上がり、商社の買い占めが起きた。冬場所。海外インフレが押し寄せ、原料暴騰が始まった。4場所を通じて、政府、日銀の財政金融政策が演じた役割は、なんといっても横綱級であろう。ある大蔵省幹部も「インフレの原因はあれこれいわれるが、財政の責任は避けられない」と告白している。カルテルと公共投資に救われた鉄鋼業界の幹部さえ「大型補正予算は間違っていた」と語るのだから、なにをかいわんやだ。47年度予算が補正、追加合わせて一般会計12兆1000億円、財投6兆4000億円。48年度は一般会計14兆2840億円、財投6兆9248億円とさらに膨らんだ。中でも公共事業費は思いっきり拡大され、地価は冒頭、労働力不足、木材、鋼材、セメント、砂利は受給逼迫で値上がりという事態を招いた。その上「日本列島改造論」は燃え上がる投機の炎に油を注ぐきっかけとなった。田中首相のこの本がまず兜町(証券業界)でむさぼり読まれ、株の投機に直結した(評論家、杉岡碩夫氏の話)というのは、象徴的な事実である。

▽マユツバの警戒型予算

政府は口を開けば「インフレ抑制が最大の政治課題」という。確かに、財政繰り延べ、第4次公定歩合引き上げで「総需要抑制」の格好はつけた。49年度予算についても「警戒中立形で行く」というのが、目下の公式発言である。しかし、警戒型予算はマユツバと見る人も多いのだ。「抑えるといってるけど、選挙となれば”あの橋、この道、わが海”という具合に予算は膨らむ。締まるものか。金融引き締めにしたって、ゴムまりを一時的に押さえつけているようなものさ」(ある農業団体首脳)。「企業のオーバー・ローンは2兆円。引き締めをトコトコやったら企業は有価証券を売り、株価は暴落する。そんなことできっこないでしょう」(ある銀行幹部)”物価抑制”の旗を引き裂くかのように、公共料金は続々値上げされ、新たな新幹線網建設の大ブロシキがひろげられている。経済政策はむしろ、来年夏に控えた政治課題に向かってまっしぐらといってもよい。これでインフレマインドがおさまったら不思議である。過去1年間の物価上昇率は、朝鮮動乱以来の最高を記録している。歴史は現在を”平和”の時に戦時並みのインフレを引き起こした時代として記憶するだろう。田中角栄首相、愛知揆一蔵相、佐々木直日銀総裁らの名前とともに。

出典:福井新聞縮刷版 1973年10月上 10月4日夕刊


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