社会って面白い!!~マンガでわかる地理・歴史・政治・経済~: ドキュメント石油危機18 1973年10月26-29日~アラブの石油国から「非友好国」に分類された日本

2023年9月17日日曜日

ドキュメント石油危機18 1973年10月26-29日~アラブの石油国から「非友好国」に分類された日本

中東の国々からの突き上げにより苦境に立たされた国際石油資本(メジャー)は

10月24日に日本に原油の大幅値上げを通告したのに続いて、 

10月25日までにブリティッシュ・ペトロリアム(BP)、エクソン、ガルフの3社が日本に原油の供給を削減すると通告してきていました(具体的な削減量を通告していたのはBPのみ)が、

この動きは止まることなく、さらに進行していくことになります(◎_◎;)

※マンガの後に補足・解説を載せています♪


<今回のマンガに関連する新聞記事>(福井新聞縮刷版1973年10月下より)

〇日本は非友好国 産油国、輸出対策で分類OECD石油会議筋(10月28日)

経済協力開発機構(OECD)緊急石油会議筋が26日語ったところによると、アラブ石油輸出国側は石油消費国を3つのカテゴリーに分け石油の供給対策を行っているもようで、この分け方によると日本はイタリア、西ドイツとともに「要注意国」さらには「非友好国」とみなされていると言う。

同筋によると、これはアラブ諸国があくまで「輸出停止国」と「輸出継続国」に分けたうえで「輸出継続国」をさらに「友好国」と”要注意国”に分けたもので「友好国」としてはフランス、英国、スペインの三国が挙げられている。また「輸出停止国」としては米国とオランダのニ国をあげている。

〇ナフサ確保ピンチに 原油供給削減 製品高騰も必至 深刻な石油化学業界(10月28日)

国際石油資本(メジャー)の大幅値上げ、供給削減通告により、石油化学業界は「原料、ナフサの確保難と価格上昇に波及する事は必至。来年から影響が現れるだろう」と深刻な表情だ。

わが国の石油化学工業は、原油を蒸留して一定比率で得られるナフサ(粗製ガソリン)を原料としており、このナフサを安価で確保できるかどうかが、業界発展のキー・ポイント。

業界筋によると、ナフサが供給制限された場合、影響はまず輸入ナフサの安定確保難となって現れそう。現在、石油価格用ナフサは全消費量の20%前後を輸入に頼り、国内価格より2000円高いキロリットルあたり一万円前後で輸入している。国内の供給不足はいきおい海外に求めざるを得ないが海外でも需給タイトになっていることから、値がつり上げられ安定確保は不可能になる。

こうした原料不足から、エチレンセンターの操業度も落ち、…(解読不能)…品のプラスチックや合繊の品不足はいっそう深刻化しそうだ。

また原料費の大幅な値上がりも避けられない。今、石油化学の基礎製品であるエチレンのコストに占めるナフサの原料費は65%。このため、原料費の高騰はそのままエチレンなど基礎製品のコストを押し上げ、最終的にはプラスチックや合繊の価格上昇にはね返る。

ナフサ国内価格はこの10月からキロリットル当たり8000円前後。中東戦争前、石油精製会社は「来年1月から1000円ー1500円の幅で値上げしたい」と通告している。しかし、その直後の情勢変化から、この値上げ幅が再度上乗せされるのは確実で、業界では「来年1月にも”ナフサキロリットル当たり1万円台の時代”になろう」と見ている。

仮にナフサがキロリットル当たり2000円高騰するとなると、エチレン価格は現行のキログラムあたり35円見当から40円台にはね上がる見通し。

この結果価格の安さが取り柄だった石油化学工業の成長が鈍化するとともに、原料費の値上がりを製品価格に転嫁できない石油化学品は「生産を中止しなければならなくなる」という。プラスチックの”使い捨て時代”は終わり、需要構造も大きく変化するだろう、とみられている。

〇北海原油輸入で合意 75年から 年間300ー400万キロリットル 三菱石油と米会社(10月28日)

三菱石油は27日、米国の大手石油会社であるゲッティ社(本社、ロサンゼルス市)と北海油田の原油を75年から年間300万キロリットルー400万キロリットル輸入することで合意に達したことを明らかにした。北海油田は、田中首相訪欧の際、わが国の参加問題で話題になった油田で、三菱石油が輸入する原油は、同油田の中央部にあるパイパー油田の原油。北海からの輸入は、わが国業界では初めてのケースとなる。

パイパー油田は、一昨年から米国のゲッティ社、オキシデンタル、トンプソン、アライエンド・ケミカルの4社が利権を持ち、本格的に開発を進めており、75年初めに年間200万キロリットルー300万キロリットルの生産が確実で、ゲッティー社の引き取り分300万キロリットルー400万キロリットルの全数を三菱石油に販売しようというものである。(後略)

〇暖冬は期待できません 灯油も大幅アップ 品不足、強気の業者(10月29日)

日本の石油業界は原油の値上げ、供給削減というダブルパンチを受けたが、本格的な需要期を前に灯油の値上がりが全国的に目立っている。10月末現在の主要都市の灯油小売価格は軒並み昨年の3割高で、1かん(18リットル) 400円から480円の高値。業者の中には「情勢によってはまだ値上げは続きますよ」と強気な姿勢を見せている。

気象庁の長期予報では、2年続いた暖冬も今年は期待できないとあって、国民にとっては”厳しい冬”になるのは間違いなさそうだ。

北海道で最も安いと言われる札幌では1かん450円(昨年同期350円)。仙台では400円から450円(380円)が相場だが、あるガソリンスタンドでは480円というバカ値もある。

東京では、昨年並みの350円という”良心的な店”から一挙に昨年より100円アップの450円の店までまちまちだ。名古屋、大阪、広島も一部に380円の店もあったが、ほとんどが400円から460円。380円のところも11月から400円以上に値上げの予定。需要期にまだ早い福岡や高松でもほとんどが昨年より7、80円高い400円程度。

値上がりとともに目立つのが灯油の入手難。すでに需要期に入った札幌では例年9月末までには消費者と小売店が一冬の「購入契約」を済ませているが、今年はほとんどの店で長期契約を渋っているという。同市内のある燃料小売店では「原油の値上げや供給削減のため、いつ石油じゃない灯油の値段が上がるか分からないので、こわくて先の契約まではできません」といっている。

また札幌市民生活協同組合は9月末から共同購入の折衝を卸業者と始めたが、業者側はドラムかん1本(200リットル) 4400円(昨年3080円)でなければ売れないと供給を断ってきた。同生協では連日の交渉の結果、やっと4000円で話がまとまり、今年中の需要を何とか確保できたという。

通産省の調べでは、灯油の備蓄は現在輸送中の分を含めほぼ100日分。今シーズンの需要増を見込んでも来年3月末現在でまだ40日分の在庫が残る、と計算している。それなのに灯油はどうしてこんなに高くなったのだろうか。

販売業者の集まりである全国石油協同組合連合会では「原価計算をすれば決して高い値段ではありません」と強気の説明。それによると、ことし初めからの原油の値上がりに伴い、メーカーの元売り価格が1リットル4・5円上がった。

それに暖冬による…で、昨年ゼロだった…(解読不能)…の取り分が1リットルあたり少なくとも1円つくことと、小売段階での人件費増などを入れれば、昨年より1かん120円程度高くなるのは当たり前だと言う。

これに対し数年前から灯油の…(解読不能)…「中東戦争による石油不安をいいことに灯油の値上げを強行している。地域によっては業者間で価格協定を結んでいる疑いも強い」と値上がりの原因を指摘している。

〇原油供給量を34.7%削減 米のガルフが通告(10月30日)

国際石油資本の1つガルフ(米国)は29日、出光興産などわが民族系石油会社に対して、原油供給量を34.7%削減すると正式通告してきた。10月1日にさかのぼって、12月までとりあえず3カ月間実施するとしている。

ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)はすでに10%の供給削減を通告、エクソン、シェルなど他の国際石油資本も削減の意向を伝えてきているが、ガルフのような大幅削減は初めて。石油業界はBPを含む他社の近く、20%以上の削減を正式通告してくるものと予測している。

産油国の原油生産削減、対米禁輸の影響は早くもこのような大量供給削減となってわが国に波及してきたわけで、石油連盟も今週消費規制について通産省に早急な具体化を働きかける構えである。

ガルフは、同社の主要供給源であるクウェートでの原油会社KOO(BPと50%ずつ出資)がクウェート政府から34.7%の生産削減を命じられ、従来通りの原油供給が苦しくなったため、これをそのまま消費し消費国に押しつけてきた。47年度のガルフの対日供給量は1970万キロリットルで、総輸入量の8.1%を占めている。

原油確保が深刻化するに従って、石油業界の中には国際石油資本による供給が保障されていない民族系会社(出光興産、丸善石油、大贏石油など)や備蓄量の少ない会社を中心に、消費規制措置の実行を望む声が急速に高まっている。石油連盟は、一両日中に原油に関する緊急委員会を開き、鉄鋼、電力、石油化学、民生用(ガソリン、灯油を含む)など業種別消費量規制を実施する方向で、通産省に行政指導による早急な具体化を働きかける方針である。

加藤正(※1)石油連盟(※2)副会長(出光興産副社長)の話 今や価格よりも量の確保が深刻化してきた。備蓄量が79日分あると楽観視する向きもあるが、もし備蓄をゼロにしたら原油を精製し末端で販売するまで40日間必要なので、40日間石油製品が皆無の状態になってしまう。早急に消費規制を実施し、部門別に最低必要量を賄う体制を作るべきだ。通産省が業種別に規制を作り、行政主導で早急に具体化してほしい。

※1 加藤正(1913~1997年)…出光石油化学社長。子どものころから秀才で小学5年生の時に中学校に飛び級で入学した(戦前は日本にも飛び級制度があった)。1962年に石油業法が施行され石油の輸入が自由化されると、加藤正は自由競争をして消費者に奉仕するという出光興産の信念に基づき、石油の輸入自由化に反対する石油連盟から脱退、世間を騒がせた。

※2 石油連盟…1955年に発足した石油業界の団体。所属するのは出光興産・東亜石油・鹿島石油・太陽石油・富士石油・コスモ石油・コスモ石油マーケティング・ENEOS・キグナス石油・昭和四日市石油・西部石油。

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