東京府(1943年まで東京府)知事、大久保一翁(1818~1888年)は
明治5年(1872年)11月8日に「違式詿違条例」を交付、
わずか5日後の11月13日からこれを施行します。
このきまりは簡単に言えば「軽いルール違反(軽犯罪)の取り締まり」です。
しかしこの決まりを見ると、そんなことも取り締まるの??
当時の日本人、どんだけ!?とビックリしてしまいます(;^_^A アセアセ・・・
当時の日本のぶっ飛んだ様子を見てみましょう💦
※マンガの後に、マンガでは出し切れなかった残りの項目や、補足・解説を載せています♪
〇周りの目を気にしていなかった日本人
「違式詿違条例」の内容を載せると、
●違式項目
・地券所持の者諸上納銀を怠り、地方の法に違背いたす者。
(納税違反の罪、けっこう軽いですね…)
・贋造の飲食物並びに腐敗の食物を知て販売する者。
(偽物の飲食物とは??メバチマグロと言ってキハダマグロを売るようなこと?)
・往来または下水外河中等へ家作並びに孫庇等を自在に張出し、或は河岸地除地等へ願いなく家作する者。
(孫庇とは、出っ張った屋根の下に建てた柱の事ですね。公共の所に家を勝手に作るな、ってことですな)
・春画(ワライエとルビがふってあります)及びその類の諸器物を販売する者。
(18禁の物を販売するなと)
・病牛、死牛その他病死の禽獣を知り販売する者。
(病気の牛やその辺で死んでた牛、病気で死んだ牛だと知っていながら販売してはいけない)
・身体に刺繍をなせし者。
(当時の日本は入れ墨をしている人がかなり多かったんですよね。今と逆です)
・男女入込の湯を渡世する者。
(混浴の先頭を運営してはいけないよと。開国後日本に来た外国人が仰天したそうです)
・乗馬してみだりに馳駆しまたは馬車を疾駆して、行人を触倒す者。ただし殺傷するはこの限りにあらず。
(馬や馬車で通行人を転ばせたらダメだよと。ケガや死人が出たらもちろん軽犯罪でなく銃犯罪で扱いますよと)
・外国人を無届にて止宿せしむる者。
・外国人を私に雑居せしむる者。
(1899年まで、外国人と無用のトラブルを避けるために外国人は決まった場所以外は自由に日本を移動できなかったし、住むことができなかった)
・町火消鳶人足、町に普請造営の節、地所組合違の者を雇う事に故障する者。
(「故障」とは「反対、邪魔」という意味もあるそうな💦組合員以外を雇う事に反対してはいけない、ということですね。独占禁止です)
・夜中無燈の馬車を以て通行する者。
(無灯火走行は危険です)
・人家稠密の場所に於てみだりに火技を玩ぶ者。
(住宅密集地で花火をしたら危険です。当時の日本は木造家屋が多いのに。)
・火事場に関係なくして乗馬せし者。
(火事の時は馬に乗ってよかった、ってことでしょうか)
・願いなく床店、葭簀張等を取建る者。
(床店[とこみせ]とは板で屋根を作る店、葭簀張[よしずばり]とは、葦で作ったすだれで店を囲うことです。簡単に言うと露店です。無許可で露店を作ってはいけないよと)
・たわむれに往来の常燈台を破毀する者。
(ふざけて街灯を破壊する…ヤバいですね💦この条例が出る少し前に、ガス灯が日本で建てられるようになっていました)
・裸体または袒裼(はだぬぎ)し或は股脛を露し醜体をなす者。
・第22条(上記)の如き見苦しき容体にて乗馬する者。
(当時の日本は上半身裸で歩く人が多くいました。それどころか裸で歩く人もいたみたいですね💦)
・馬及び車留の掲示ある道路橋梁を犯して通行する者。
(通行禁止の所を通ったらアカンですね)
・無検印の舟、車を以て渡世する者。
(無許可で船や人力車・馬車などの営業をしてはいけませんよと)
・男女相撲並びに蛇遣いその他醜体を見せ物に出す者。
(江戸時代、目が見えない男と女性による相撲がけっこう人気があったようです。女性も上半身裸です。日本にも蛇使いがいたんですね…)
・川堀、下水等へ土芥、瓦、礫等を投棄し、流通を妨ぐる者。
(昭和時代半ばぐらいまで、川や海は天然のごみ捨て場でした)
・軒外に木、石炭、薪等を積置く者。
(公共の場所=自由勝手に使っていい場所、という認識でした)
●詿違項目
・狭隘の小路を馬車にて馳走する者。
(狭い道を馬車で行ってはいけませんね)
・夜中無提燈にて人力車を挽き及び乗馬をする者。
(馬に乗る場合も灯りを持ってなければいけなかったんですね。まぁそうか(;^_^A)
・暮六つ時より荷車を挽く者。
(暮れ六つとは、午後六時頃のことですね)
・斟酌なく馬車を疾駆せしめて行人へ迷惑を掛し者。
(猛スピードで道を馬車が走ってたらそら怖いですよ)
・人力車挽の者しいて乗車を勧め過言等申掛る者。
(無理やりな客引きはダメですよと)
・他人園中の果実を採り食う者。
・馬車及び人力車、荷車等を往来に置き行人の妨をなし、及び牛馬を街衢に横たえ行人を妨げし者。
(「衢」とは大通りの事です。周りのことを考えてないですね~💦)
・禽獣の死する者、或は汚穢の物を往来等へ投棄する者。
(上記のように公共の場所=自由勝手に使っていい場所、という認識でした)
・湯屋渡世の者戸口を明け放ち、或いは二階へ見隠簾を垂れざる者。
(先頭を経営する者は外から中のようすがわからないようにしなければいけませんよと。当たり前ですけど当時は開放的でした)
・居宅前掃除を怠り或は下水を浚えざる者。
(家の前の見栄えを気にしなさいよと。側溝をきれいにしないと伝染病のもとにもなりますし)
・婦人にていわれなく断髪する者。
(断髪とは短い髪にすることですね。女性は長い髪にしなさいと。差別ですねぇ。日本では第一次世界大戦以降にモガと呼ばれる髪を短くする人が少し現れました。ちなみに正当な理由(いわれ)があれば女性も断髪できたのですが、それは夫と死別した場合でした。政府の役人たちが、「私たちの老母は条例が出る前に、夫を失い、断髪していたのですが、今回の条例が出て、髪を元に戻そうと思っているのですが、なにぶん年寄りで、髪が少なく、元に戻すのが難しいのです。今のままでもよろしいでしょうか、と上にお伺いを立てたところ、『夫が死んで断髪するのは「いわれなし」とは言わないので、そのままにしてかまわない』という返事を受け取っています)
・荷車及び人力車行逢う節、行人に迷惑をかけし者。
(当時は安心して歩くこともできませんでした)
・下掃除の者、蓋なき糞桶を以て搬送する者。
(当時は下水道とかないですから[1884年に東京に初めて下水道が作られた。本悪的に全国に広がったのは戦後になってからのこと。現在日本の下水道普及率は80%。徳島県は現在でも18%。吉野川周辺に人家が集中していることが大きな理由だそうな]、糞尿は業者が桶に汲み取るタイプでした。で、それを農家とかに売るんですね。)
・旅籠屋渡世の者、止宿人名記載せず、或はこれを届けざる者。
(防犯のためでしょうか)
・往来筋の号札または人家の番号、名札、看板等をたわむれに破毀する者。
(ふざけて壊すって…💦)
・喧嘩口論及び人の自由を妨げかつ驚愕すべき噪閙をなし出せる者。
(さわがしい、やかましいのはダメだと。「驚愕すべき噪閙」(非常に驚くほどのさわがしさ)ってすごいなぁ(;^_^A)
・往来常燈をたわむれに消滅する者。
(ふざけて消すって…💦)
・踈忽により人に汚穢物及び石礫等抛棄(ほうき)せし者。
(粗忽とは軽はずみ、軽率、ということです。ふざけて糞や石や砂を投げつけていたのでしょうか。物騒な…💦)
・田園種芸の路なき場を通行しまたは牛馬を牽入る者。
(田んぼに突入してはいけませんね)
・物を打掛け電信線を妨害する者。
(当時は電信線に物をくくりつけたら運ばれていく、と考える人が結構いたそうです)
・市中往来筋に於て便所にあらざる場所へ小便する者。
(今でも酔っ払いとかしますけどね(;^_^A)
・店先に於て往来に向い幼子に大小便せしむる者。
(なぜ店の前で…?店に対する嫌がらせなのか…??)
・荷車及び人力車等を並べ挽きて通行を妨げし者。
(自転車もそうですが並進は迷惑です)
・誤って牛馬を放ちて人家に入りしめし者。
(当時ならでは)
・犬を闘わしめたわむれに人に嗾する者。
(闘犬というやつですね。それをふざけ半分で人に差し向けられたらたまったもんじゃないです)
・巨大の紙鳶(たこ)を揚げ妨害をなす者。
(なんの妨害なんでしょうか?他のたこの妨害?)
〇条例の変更・追加
条例も時代に合わせて変更・追加されていきます。
出されてから6年後の明治11年(1878年)の物を見ると、
罰金は「違式」が50~75銭だったのが75銭~1円50銭に、
「詿違」が6.25銭~12.5銭だったのが5~70銭に変わっています。
インフレの影響ですね。
笞刑も消滅しており、両方とも出せる金がない場合は拘留になっています。
「違式」は5~10日、
「詿違」が1~2日だったのが半日~3?日に変わっています。
「違式」は地券所持の者~・往来または下水外河中等へ~・願いなく床店~・無検印の舟~・軒外に木~、が消滅しています。
「詿違」は暮六つ時より~・旅籠屋渡世の者~・物を打掛け電信線を~・巨大の紙鳶~、が消滅しています。
一方で追加されたものとして、
「違式」は
・制禁の場所にて竹木を伐り魚鳥を捕る者。
(今でも入ったらダメなとこで釣りをしてる人いますよね…)
・神仏祭礼節世話人等強いて出費を促す者。
(祭りの運営者が参加者に無理やり金出させたらダメだという事でしょうか)
・男にして女粧し女にして男粧し或は奇怪の扮飾を為して醜体を露す者。但し俳優歌舞妓等は勿論女の着袴するの類は此限に非ず。
(これはLGBTだからなのか、奇をてらっているのか。しかし、往来ではなく、演劇や歌舞伎などは例外としています)
・牛馬其他諸獣の斃れたる者の皮を定まり場所外にて剥取る者。
(獣の皮をはぐ場所は決まっていたようです)
・猥(みだ)りに筏を橋梁又は材木に繋ぎ或は通舩を妨る可き処に泊する者。
(これは船の通行の邪魔ですね)
・制限に背きたる筏にて川筋を往来する者。
(大きさが決まってたんでしょうね)
・豚肉営業規則に違背する者。
・伝染病予防に関する諸規則に違背する者。
(当時はコレラがよく流行っていました)
・河海岸石垣等へ棹を突き入れ舟筏を繋留する。
(無許可はダメですね)
・猥りに附会揚言して新聞紙を売歩行く者。
(大声を張り上げながら新聞紙を売り歩くのはダメ)
「詿違」は
・酔に乗じ戯に車馬往来の妨害をなす者。
(酔っぱらいはダメですな)
・格子を揆き檣塀を挙ち徒に顔向を出し往来を敢み嘲哢する者。
(こんな人いたんですね(;^_^A 家の窓から歩いてる人を見てバカにする人…)
・牛馬の繋ぎ方を忽にして他人に妨害をなす者。
(しっかりつないでおかないと怖いです)
・遊園及び路傍の花木を折り或は植物を害する者。
(うーん風流を解さない人…)
(※「詿違」のここまでは明治11年以前に既に追加されていたもの)
・道傍又は人家に於て強て合力を申掛け或は押売する者。
(「合力」とは金銭をめぐんでもらうことです。無理やりお金をとろうとするのはダメということですね)
・官林宮園及び公園等に掲示する禁状を犯す者。
(公園などのルールを破ってはダメですね)
・菓子其他の物品を賭し営業をなす者。
(今だったら祭りとかでバンバンやってますけどね)
・神社仏閣亦は他人の家屋檣壁等へ楽書及び張紙を為す者。
(中に旅行客の名前とか千社札とかいっぱいあるお寺ありますよね…)
・街上に於て高声に唱歌する者但し歌舞営業の者は此限に非ず。
(外で大声で歌っては迷惑ですよね)
・夜間十二時後歌舞音曲亦喧呶して他の安眠を妨げ者。
(夜中に音を鳴らしたりやかましくされては寝れません)
以上です!疲れた~(;^_^A アセアセ・・・
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