社会って面白い!!~マンガでわかる地理・歴史・政治・経済~: 1973年10月16-17日~強力な「石油軍」の出現

2022年10月6日木曜日

1973年10月16-17日~強力な「石油軍」の出現

 1973年10月6日に始まった第四次中東戦争

1990年に起きた湾岸戦争ではイラクに攻められたクウェートは。

第四次中東戦争ではかなり好戦的で、

前回のマンガで描きましたが、クウェート政府は10月9日には『石油をいかに中東戦争の武器として利用するか』について話し合うため、アラブ石油産出国会議を招集したいと発表していました。

そして10月16日、ついに産油国は石油を武器にします。

しかし、これは第一弾にしか過ぎなかったのです…😱

※マンガの後に補足と解説を載せています♪



〇中東産油6カ国 原油大幅値上げ

ペルシャ湾産油6カ国は17日[正しくは16日。日本時間だと17日という事か]、原油価格を一方的に値上げし、アラブ産の代表的原油アラビアン・ライトの新市場価格※をバーレルあたり3ドル65セントとすると発表した。6カ国はアラビアン・ライトの現在の市場価格を3ドル12セントと一方的に規定し(実勢価格※は2ドル80セント程度)、これを基準に新しい市場価格を決めたもので、この値上げ幅は17%。

一方、市場価格と公示価格※の比率は、1971年のテヘラン協定以前の公示価格は市場価格の1.4倍という比率を採用することを決めたため、アラビアン・ライトの新公示価格は10月1日現在のバーレル当たり3ドル011セントの1.4倍の5ドル11セントにはね上がることになる。公示価格の引き上げ幅は69.7%※※となる。6カ国と西側石油会社との値上げ交渉はウィーンで行われていたが、話し合いがつかず、先週末物別れとなっていた。このため、産油国側が集まって討議した結果、一方的値上げを宣誓したものである。

(※「市場価格」とは、生産者から卸売業者が買うときの価格のようなイメージ。競りで落としている場面があったりするが、需要が多ければ値段は吊り上がっていく。マグロみたいに。需要が少なければ買いたたかれる。だいぶ需要と供給に左右される価格といえる。「公示価格」は「希望小売価格」のようなもの。生産者が設定した販売参考小売価格のこと。一方の「実勢(じっせい)価格」とは、お店で売られている価格のイメージ。スーパーとかで夕方値引きが行われたりするが、売られている価格より上がることはないだろう。だから、実勢価格は「公示価格」より低めになりやすい。)

(※※今回の場合、公示価格は約70%引き上げとなったが、販売参考小売価格が上がっただけで、こちらには大きな意味はない[だから、新聞でもこっちは後回しになっている。ウィキペディアさんなどでは70%上がったことを強調しているが、何度もいうが参考価格が上がっただけなので、「実勢価格」2.8ドルから、「市場価格」を3.65ドルに上げた方が問題なのだ。これはつまり、生産者である産油国から、卸売にあたる西側石油会社が3.65ドルで買うことになった、ということになった、ということである。小売りにあたる日本の石油関連会社は、もちろん3.65ドルよりも高い値段で買わざるを得ない。そうじゃないと卸売の西側石油会社はもうからんので。だから、次の記事のようなことになる)

〇頼みは消費規制だけ 原油値上げ 無為無策の業界

(日本は)供給面でも、メジャーズ※に61.2% (46年度)依存しているため、メジャーズの不興を買う産油国からの原油直接買い付けなどの動きにも出られない。結局のところ無為無策なのが現状で、ガソリンの在庫余剰や政府の灯油卸売価格の凍結策などによって、原油値上げの石油製品価格への上乗せに苦しむ業界の中からは「この際国内の石油消費規制を真剣に考えるべきだ」(加藤石油連盟副会長)と言うギリギリの声が上がり始めた。…

メジャーズ側は値上がり分をそのまま販売価格に上乗せするので、日本の輸入する原油価格は年内にも1ドル前後上がりそうな形勢である。

(※メジャーズとは、エクソン=モービル、シェブロン=テキサコ[アメリカ]と、ブリティッシュ・ぺトロリアム=アモコ[イギリス]、ロイヤル・ダッチ・シェル[イギリス・オランダ]から成る、西側石油会社である。1970年代までは、生産者のペルシャ湾産油国よりも立場が上で、石油販売価格を決定していたが、1970年代以降はペルシャ湾産油国と立場が逆転し、力は大幅に弱まった)

〇中東の戦火 日本も”ジリジリ”

石油業界は中東戦争の荒波をモロにかぶった。エネルギー危機の最中にアラブの石油戦略の矢面に立たされ「日本が最も苦しい立場」(アラビア石油※)と石油不安は深刻である。99.7%輸入に頼る日本は、そのうち81%までが中東諸国から。ところが石油備蓄量はたった79日分。アラブ側が石油戦略をエスカレートさせれば”日本株式会社”の動脈がエンスト状態になりかねないとあって、強力な「石油軍」の出現に戦々きょうきょうだ。単価運賃もぐっとアップするありさまに「このままでは家計へのしわ寄せも…」(石油連盟)と石油業界は早くも値上げの構えで、消費者としても早期停戦を祈りながら、クウェートでのアラブ産油国会議の成り行きが気になるところだ。

(※アラビア石油は、まぎらわしいが、日本の会社。石油の開発を行っていたが、現在はクウェートからの石油の輸入・販売にシフトしている)

(記事は福井新聞縮刷版1973年10月中 10月18日より。)



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