社会って面白い!!~マンガでわかる地理・歴史・政治・経済~: ドキュメント石油危機13 1973年10月23ー25日~ガソリン”100円時代”せまる⁉

2022年12月2日金曜日

ドキュメント石油危機13 1973年10月23ー25日~ガソリン”100円時代”せまる⁉

たいへんお待たせいたしました💦  

前回の石油危機マンガが11月10日だったので、約3週間ぶりになってしまいました(;^_^A アセアセ・・・

前回のドキュメント石油危機12では、

続く第四次中東戦争で、イスラエルへの支援をやめないアメリカに対し、

アラブ産油国諸国が、石油の生産の削減を決めたり、

アメリカへの石油輸出を停止するなどの動きに出たことについてやりましたが、

その第四次中東戦争も、終わりの時がおとずれます。

しかし、石油危機は、戦争終結の後に訪れるのでした…😱

※マンガの後に補足・解説を載せています♪


<今回のマンガに関連する新聞記事>(福井新聞縮刷版1973年10月下より)

〇ガソリン”100円時代”迫る? 来月にかけ値上げ攻勢

日本石油、出光興産など石油の元売り(卸売)業界は、自動車用ガソリンの値上げを特約店、石油スタンドに通告していたが、石油スタンドは20日過ぎからばらばらに値上げを実施し始めた。

値上げ幅は地域によって異なるが、これまで実勢価格で1リットル当たり平均62円ー63円だったレギュラーガソリンを同70円程度(ハイオクタンはさらに10円高)にしたところが多い。11月に入れば全国の石油スタンドでどっと店頭価格の引き上げが出てくる見通しだ。

ただ今度の値上げは、石油元売り業界が10月1日に実施を計画していたのがずれ込んだ分で、今回の中東産油国の実質30%に上る大幅原油値上げ分は含まれていない。

業界筋によると、今のガソリンの店頭価格は1リットルあたり現金売りでレギュラーが62ー65円、ハイオクタンが71ー75円、クレジットでレギュラー60円、ハイオクタン70円、ある程度数がまとまった掛け売りでレギュラー58円、ハイオクタン68円といったところ。

元売り会社の多くは、下旬から1キロリットルあたり3000円の値上げを特約店等に通告、末端の石油スタンドは維持費やマージンを上乗せして、1リットルあたり7ー8円の値上げに移ったわけだ。元売り業界は、今度の中東産油国の値上げに基づき国際石油資本から30%もの大幅値上げ通告があったため、さらに1キロリットルあたり5000円程度は元売り価格引き上げを行うことになるとしている。

これが末端価格にはね返れば、ガソリンはさらに1リットル当たり10円程度上がると業界筋はいっており”ガソリン1リットル100円時代”が目前に迫ってきた感じである。

〇原油大幅値上げ通告 国際資本2社が相次ぎ エクソンは30%前後 国内価格へ転嫁必至 

東亜燃料(南部正治社長)が24日明らかにしたところによると、世界最大の国際石油資本(メジャー)で、同社の石油供給先であるエクソン社はこのほど原油価格を10月16日にさかのぼり先にアラブ産油国が決めた新しい市場価格まで値上げすると通告してきた。

これはアラブ産油国の原油大幅値上げ決定に伴うもの。現行の市場価格(メジャーがわが国の石油燃料業者に引き渡す価格)は中東の代表的な原油アラビアンライトの場合、1バレルあたり2ドル75セントー2ドル80セントで、新市場価格は3ドル65セントとなっているので、値上げ幅は85セントー90セント、値上げ率は30%前後に達する大幅なもの。

アラブ産油国の値上げ決定後、すでにシェル社が1バレルあたり最低1ドルの値上げを通告しており、エクソンに次いで他のメジャー各社も相次いで同水準の値上げを通告してくるものとみられる。

エクソン社の値上げは新しい市場価格を??(読み取り不能)にしているところから、アラブ産油国側の一方的な石油値上げを事実上受け入れたものとして注目される。

さらに値上げ価格の上限を新市場価格とした事はメジャー側の新しい原油価格政策の1つの傾向と石油業界では受け取っている。

相次ぐメジャーの原油値上げ通告によってわが国の石油業界が石油製品の大幅値上げに踏み切るのは必至で、ガソリン、灯油等の値上げが年末から来春にかけて、国民生活を脅かすことになろう。

〇中東諸国と石油(上)

第4次中東戦争は、世界のエネルギー源の42%を占める石油が今日内在する国際的な矛盾を、いっぺんにさらけ出した。原油大幅値上げ、生産削減、石油資本の国有化など、産油国の全面攻勢を前に、つい3年前まで万能を誇った国際石油資本が、資本主義国の石油の60%を供給する立場にありながら、今やなすすべを知らない有様だ。

わが国を含む石油需要国が当面しているのは”高価格、供給不安定時代”の到来である。事態を招いた本質は何なのか、日本の置かれた状況とその対策は…激動の中で考えてみた。

▽政治的武器として行使

「考えてみれば、石油に限らず資源はその保有国に全ての権利があるわけだ。日本だって石炭、電力など資源産業には外国資本の介入を許していない。その点、石油資源は産油国の主権に属するものといいながら、石油輸出国機構(OPEC)が結成され1970年秋に本格的な値上げ攻勢を始めるまでは、量、価格のいずれも実質上国際石油資本が握ってきた。石油はそれを通じて安価、無尽蔵に得られるものだと、我々は勝手に思い込んでいたのではないか」

わが国の中東3行会社の1つ、アブダビ石油(三間安市社長、本社東京)の副社長で、最近アブダビを訪れた杉本茂氏はこう指摘した。国連は62年以降3回にわたって「資源は恒久主権(※1)に属する」ことを総会で決議している。

OPEC諸国はこの主権に基づいて、アルジェリア、イラク、イラン、リビアのように石油国有化を進めてきた。

そして今度は価格の決め方についても、これまでのように国際石油資本との交渉で、しかも市場価格は国際石油資本が一方的に決めて利益を我が物にするような仕組みを破壊したのが、17日のクウェートにおけるOPECの声明である。

生産量については、1967年の中東戦争(※2)当時も約1週間生産停止を行っており、今回の5%削減は主権の行使としては取り立てて意外なことではない。ただ社会主義国のイラク、アラブ過激?(読み取りが難しい)派のリビア、親米穏健派のサウジアラビアなどイデオロギーも体制も異なるアラブ産油国が、イスラエルとその支持者米国に圧力をかけるための政治的武器として初めて主権を行使したという点が、西側国際石油資本並びに消費国から注目されているわけだ。

▽変わりつつあるサウジ

国際石油資本、消費国にとってとりわけ脅威である供給削減については、それを実行するかどうかのカギは穏健派サウジが握っていた。戦争発生直前、わが国で最もサウジ通と言われる林アラビア石油アラビア駐在代表はこう分析していた。

「サウジの態度は確かに変わりつつある。アラブの中でのリビアの台頭、ユダヤ人であるキッシンジャー(※3)米国務長官の登場、イスラエルとの対立激化がその背景で、アラブの盟主を自認するファイサル国王(※4)としては、対内的にも対外的にも影響力を発揮する必要が出てきた。石油の力でこれを行おうとしているわけだが、米国と対決するような形にはなるまい」

しかしそのサウジが、最新米国製兵器で武装した軍隊をシリア戦側に投入してソ連の兵器で武装したイラク軍と共闘、また原油の10%生産削減を実施したのである。西側諸国の事情通のほとんどが林氏と同様の観測だった。アラブ内部の情勢について日本を含む西側諸国がいかに情報不足であるか、逆に言えば石油を通しての米国とサウジとの従来のつながりをいかに過信し、頼りきっていたかを証明した出来事といえるだろう。

今アラブ産油国は、石油を政治問題を解決する武器として、はっきり使用し始めた。米ソ両大国の舞台裏の交渉で、自国の運命を左右されるのでなく、資源を主権の武器として自らの手による解決に踏み出したといってよいだろう。

▽過剰利潤を吐き出させる

一方、価格については公示価格を70%引き上げ、産油国政府の取り分(所得税と利権料)を増加させて、国際石油資本の収奪していた利潤を吐き出させることに踏み切った。

産油国の狙いは「最近は原油不足で実勢価格が値上がりしている反面、所得税や利権量決定の基準となる公示価格の上昇が抑えられてきた。このため産油国の取り分が国際石油資本の取り分に比べて相対的に少なくなり、その比率は産油国6、石油資本4の比率になっていた。今度の値上げの仕組みは、これを1971年以前の産油国8、石油資本2の比率に戻そうというもの」(??[判読不能]石油連盟??[判読不能]部次長)である。

同時に「今や人民が石油のコストを監(?)視しなければならない時である。産油国が原油を売り、原油販売会社や石油??(判読不能)会社がそれから大きな収入を得れば、産油国はそのうち応分の所得を要求する権利がある。会社側はこれを利潤の中から払わなければならない。消費者に転嫁し、値上がりはアラブのせいだとしてはならない」(ジャルード[※5]、リビア首相)と、国際石油資本の便乗値上げ過剰利益に歯止めをかけている。

▽最大の被害者、日本

国際石油資本側は一方的な値上げ通告を受けて、ロンドンで対応策の協議に入っている。だが有効な対応策があるはずもなく、結局は「産油国政府取得の増加分(公が価格上昇に伴う所得税、利権料)は会社の負担増になるので、販売価格に上乗せすることになるだろう。現在2ドル80セントの原油は4ドル以上になろう」(ジャパン石油開発)との見方が有力だ。

原油と言う資源(?判読が難しい)の保有国が、今や自らの主権のもとに生産数、価格の決定権を完全に握った。その結果、これまで米国中心の国際石油資本が牛耳ってきた石油供給体制、価格体制は音を立てて崩れつつある。これが現状といってよいだろう。そして値上げ、供給量削減の最大の被害者は、国際石油資本、とりわけ米国に頼り切ってきた世界第一の原油輸入国日本である。

※1 恒久主権…天然資源は、それが存在する国に開発・使用・処分する権利があるとするもの。1962年に国連総会で採択された。その中では、外国資本の国有化も認めている。また、外国による経済開発は、その国の自立を助けるものでなければならない、としている。

※2 1967年の中東戦争…第三次中東戦争のこと。

※3 キッシンジャー(1923~)…ユダヤ系ドイツ人。1938年、ナチ党のユダヤ人迫害に遭い、アメリカに移住。1968年、ニクソン大統領の下で大統領補佐官。1973年には国務長官を兼任。1977年まで国務長官を務めた。

※4 ファイサル国王(1906~1975年)…1964年に第3代サウジアラビア国王に即位。1969年にイスラム諸国会議機構(現・イスラム協力機構)を結成してアラブの盟主となる。1973年の第四次中東戦争の際には石油輸出国機構を主導して石油の値上げを実行した。1975年、甥によって暗殺された。

※5 ジャルード…A.S. ジャルード(1944~)。1969年クーデターに参加し、1972年首相。1979年全ての公職から退く。その後長くカダフィ大佐の側近としてリビアのナンバー2の立場にあったが、2011年の「アラブの春」の際にカダフィ大佐から離反した。

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