社会って面白い!!~マンガでわかる地理・歴史・政治・経済~: ドキュメント石油危機12 1973年10月19ー22日~石油消費国に向けて繰り出された新たなパンチ

2022年11月10日木曜日

ドキュメント石油危機12 1973年10月19ー22日~石油消費国に向けて繰り出された新たなパンチ

 ドキュメント石油危機10で、サウジアラビアが、アメリカに対し、

これ以上イスラエルに軍事支援を続けるならば石油停止もあり得ると

警告したことを紹介しましたが、

アメリカは軍事支援を止めなかったため、

アラブの産油国はついに動くことになります💦

※マンガの後に補足・解説を載せています♪


〇石油 リビアが対米禁輸 カタールは生産削減 イラクも値上げ

イスラエル及びその支援国に”石油の武器”を発動するアラブ産油国の動きは19日も続き、この日はリビアとカタールが生産削減や対米禁輸の措置をとった。またリビアとイラクは大幅な石油価格引き上げを発表した。

これらの措置はいずれも、主として米国にイスラエル支援をやめさせる目的でとられたものだが、実際には西欧や日本が大きな影響を受けそうであり、経済協力開発機構(OECD)は25日緊急石油委員会を開くことになった。

カタールはこの日、クウェートのアラブ石油輸出国機構(OAPC)(※1)会議決議に従い、石油生産量の10%削減を決め、直ちに実施すると発表した。この措置は前日のサウジアラビアの措置にならったものだが、政府声明は「米国その他イスラエル支援国に対する供給停止のための第一歩にすぎない」と、さらに厳しい措置がとられることを示唆している。

この後まもなく、リビアも年間生産量の5%削減を発表、同時に1日20万バレルに上る対米輸出の停止を明らかにした。対米禁輸は前日のアブダビ(※2)に続く動きである。リビアの石油は硫黄分が少ないため米国では重視されている。

しかし、リビアの措置で国際的に衝撃を与えたのは、公示価格をバレルあたり4.604ドルから8.925ドルに引き上げたことだ。公示価格は石油会社の利権料や税金の支払いの基礎となる価格である。

リビアの値上げはペルシャ湾岸諸国が16日バーレル当たり3ドル強に引き上げられたのに追随したものである。イラク政府もこの日、公示価格を2.97 7ドルから5.061ドルに引き上げた。

※1 OAPC…OAPECの誤りか。

※2 アブダビ…アラブ首長国連邦を形成する首長国の1つだが、アラブ首長国連邦の面積の80%を有し、首都もアブダビ内のアブダビ市にあり、影響力が強い。当時はアブダビがOPECに加盟しており、後にアラブ首長国連邦名義になった。

〇電力も早まる? 東電会長が微妙な発言

木川田一隆(※3)東京電力会長は19日、経済同友会幹事会後の記者会見で、東電の電力料金問題について「産油国の原油大幅値上げが現状のまま続けば、がまんできない状態になる。原油引き上げがどの程度になり、コストにどうはね返るかを調べた上で、値上げ時期、額などを検討することになろう」と語った。さらに「今後の料金問題も考えると、10年という長い期間据え置くと言うのは困難でもう少し短い期間で考え直さなければならない」と述べ、原油の大幅値上げにより、同社の料金値上げが早まることを示唆した。

※3 木川田一隆(きがわだ かずたか)(1899~1977)

1971~1976年にかけて東京電力会長。実業家だが日中国交回復にも力を尽くし、訪中もしたが、反対派からは自宅前に爆発物を置かれるという妨害を受けた。「勲章を欲しがるのは老害の証拠」といい、生涯勲章を受け取らなかったという。

〇トイレットペーパー 不足と値上がりでピンチに 節約を強力に呼びかけ 学校や事業所 買いだめに奔走

紙不足と紙類の値上がりは、このところますます深刻。中でも日常生活に欠かすことのできないトイレットペーパーの不足と値上がりが厳しい。トイレットペーパーの原材料である古紙不足が最大の原因らしいが、何しろ”毎日の問題”だけに一般家庭はもちろん、官公庁、学校など大口の需要どころは、節約と買いだめ作戦に懸命だ。

福井市内の上小売店の話では、トイレットペーパー一巻き(55メートル)は8月ごろまで小売り値が23ー5円だったと言う。それが9月ごろから33円に、10月には45円にはね上がった。また紙質の良い家庭用チリ紙(約2000枚)も今春、350円売りだったのが、今では550円と値上がりが厳しい。

このため文具店や紙店には、普段見慣れない男の客がマイカーで現れ「いくつでも分けて欲しい」と買いだめ作戦する姿も目立つ。

特にこたえているのは職員や従業員、生徒を多くかかえている会社、学校、県庁など。「むだ使いはせぬように」とチリ紙類を大事にするPRに懸命。藤島高では、年間でトイレットペーパー1200個ぐらい使用するので最近「一年分を買いだめした」と言う。明道中は各学期ごとに買っているが、1学期は一巻き30円だったのが2学期36円。値上がりの話を聞いて、3学期分も追加注文したところ「一巻き46円なら何とか世話できそう」とのこと。予算の狂いもあって、経費ねん出に苦しいという。

福井市教委では、市内の小、中学校合わせて年間約120万円のチリ紙代予算化しているが「来年は倍になりそう」と頭を痛めている。また、県管財課も年間、本庁職員用としてトイレットペーパー7300巻き(約14万円)を購入しているが「今度の入札では3ー4割高くなる覚悟をしています」と言う。大和紡など若い人が多く使用歴の高い一般企業も「むだ使いはしないように徹底させている」と話している。

紙類がこうも不足、値上がりしている理由については、製紙業者は紙全体にいえることは、紙の原料となる原木(外材)の輸入が現場労働組合のストなどでストップしている▷国内の製紙工場の排水が公害問題でやり玉に上がり、生産が思うように任せない▷チリ紙類は、材料の古紙が非常に少なく高値を招いているーという。

(記事は『福井新聞縮刷版1973年10月中』 10月21-23日より。)


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