社会って面白い!!~マンガでわかる地理・歴史・政治・経済~: ドキュメント石油危機15 1973年10月25日~資源節約のため新幹線の速度アップは延期!?

2022年12月26日月曜日

ドキュメント石油危機15 1973年10月25日~資源節約のため新幹線の速度アップは延期!?

 1973年10月23日に第四次中東戦争は終わりを告げたとされていますが、

実際は24日にスエズ運河西岸で戦闘が起こるなど、完全に終わったわけではありませんでした(◎_◎;)

第四次中東戦争の中では、イスラエルに味方する国々に打撃を与えるため、

アラブ諸国により石油の生産の削減などが行われましたが、

その影響は日を追うごとに、日本に現れていくことになります💦

※マンガの後に補足・解説を載せています♪


<今回のマンガに関連する新聞記事>(福井新聞縮刷版1973年10月下より)

〇原油供給を削減 国際資本3社が通告

アラブ産油国の生産削減に伴う世界的な原油不足で、国際石油資本(メジャー)はわが国石油業界にいよいよ供給量の削減を通告してきた。25日までに通告してきたのはブリティッシュ・ペトロリアム(BP、英国)、エクソン(米国)ガルフ(同)で、BPの場合11月から対日供給量の10%を削減することになっており、他社の場合も同様の内容とみられている。

一方、丸善石油(宮森和夫[※1]社長、本社大阪)はインドネシアの低硫黄原油の供給が減ったことを理由に25日、東京、関西、中部電力などに引き渡し量の削減を申し入れ、原油不足は電力供給にまで及ぶ事態となってきた。

シェル(英国)、モービル(米国)も来週中に供給削減を通告してくるとみられており、日本石油(滝口丈夫[※2]社長、本社東京)に対して安定供給を約束しているカルテックス(米国)も削減してくる可能性があるとみられている。

わが国は必要とする原油の72.2% (46年度)を8大国際石油資本を含む米、英、石油資本に依存しており、国際石油資本の供給量削減はわが国の石油需要を圧迫、長期化すれば末端需要にまで影響が出るおそれもある。

一方、丸善石油の東電などに対する供給削減は、丸善の供給元であるユニオン・オイル(米国)が、インドネシアのアタカ原油の対米輸出量が増えたことを理由に対日供給を減らしたことによる。

同原油は硫黄分0.1%と極めて良質な原油で電力業界には欠かせないものだけに、今のところ対日供給量は1日あたり5千バレル余と少ないとは言え、東電など業界は「この動きが広まれば、燃料の手当てに困る」と重視している。

わが国の原油輸入実績は47年度2億4360万キロリットルで、これを供給者別に見ると、カルテックス(米国) 15.7%、シェル(英国) 12.8%、エクソン(米国) 11.9%、モービル(同) 9.2%、日本の産油会社8.6%、ガルフ(米国)8.1%、ブリティッシュ・ペトロリアム(英国) 4.2%などである。

※1 宮森和夫(1902~1988年)…1964年に丸善石油の社長に就任。就任時、丸善石油はひどい赤字だったが、宮森は「人生最後の勝負を当社再建にかける」と話し、1967年3月に赤字を解消。1968年アブダビに、1969年アラスカに石油開発会社を設立。1969年に丸善石油の広告のキャッチコピー、「猛烈ダッシュ」から、「モーレツ」が流行語となった。1976年に会長職に退いた。

※2 滝口丈夫…正しくは瀧口丈夫(たけお)。日本石油(現:ENEOS)の元社長。2002年9月21日、肺炎のため95歳で死去した。

〇電力料金は累進制度を 資源節約自民が提言へ

自民党は25日午前、政調審議会、資源対策特別調査会の合同会議を開き「資源エネルギーの合理的利用の推進に関する提言」をまとめた。近く党総務会に諮ったうえ、政府に提出し、具体策の検討を要請する。この提言は、わが国が資源エネルギー不足で深刻な危機に直面しているとして、資源節約の面から国民にも協力を呼びかけたもので、資源対策の「ケチケチ版」。その主な内容は①将来予定されている新幹線のスピードアップは慎重にする②クーラーの普及などの消費電力の増加に応じて電力料金制度を再検討する③安全性の高いノンクラッチ車(※1)の普及も慎重にする。④紙節約のため過剰包装や過度の広告は自粛するーなど。さらにこの合理的利用対策と合わせて新資源エネルギーの技術開発を積極的に推進するよう付言している。この提言は国民の消費生活の抑制につながる恐れがあるため、各方面に波紋を呼ぶことになろう。

自民党は深刻な資源問題に対処するため、今年夏、資源対策特別調査会(倉石忠雄[※2]会長)を設置し、資源エネルギーの使用の合理化推進に関する第一分科会(小沢太郎[※3]主査)新資源エネルギーの開発及び廃資源の活用増進に関する第二分科会(前田正男[※4]主査)資源エネルギーの供給確保及び?資源エネルギーの要請に対する新しい産業構造推進に関する第3分科会(小笠公韶[※5]主査)にそれぞれ分かれて対策を検討してきた。

このうち第一分科会が最初に作業を終えて提言をまとめ、この日の合同会議で了承を得た。その内容は①生産②運輸③流通販売ー各部門の資源エネルギーの合理的利用④エネルギーの多目的利用⑤廃資源の回収再生利用⑥国民運動の展開ーの6項目にわたっている。

この実施にあたっては国、地方公共団体及び民間企業が率先することとし、併せて一般消費者にも協力を呼びかけている。

この中で資源エネルギーの「むだ遣い」としてヤリ玉にあがっているのはテレビ、冷蔵庫、クーラーなどかつての”三種の神器”や新幹線、ノンクラッチ車、広告、ダイレクトメール、自動車などの過度のモデルチェンジ、過剰包装などである。現在のテレビはほとんどがプレヒート式で、受信していない時も常時通電してブラウン管を温め、電力を食っている。このテレビは現在約240万台で、仮に使用時以外にスイッチが切れるよう”改良”した場合は、年間約14万キロワットが節約できるとして製品の改良促進を提言している。新幹線のスピードについては国鉄は将来、現在の時速200キロから250キロにアップする計画を持っている。その場合、年間発電設備で13万キロワット、電力量 5億キロワット時の増加が必要とされるといわれる。したがって提言では、省エネルギーの観点に立って慎重な検討を要請している。

クーラーの普及率の伸びは年々著しく現在750万台。夏のピーク時には相当な電力を食っている。提言ではこれに対応して「累進的な電力料金制度の検討」を述べて、料金引き上げを示唆している。

モデルチェンジについては、大幅変更のフルチェンジは4ー6年ごとに行われるが、軽度の変更は毎年。自動車、家電製品のモデルチェンジは品質向上を図る反面、環境問題、資源浪費につながるので過度のモデルチェンジの自粛が提言されている。

広告、ダイレクトメールについては自粛を求めると同時に、第3種郵便物(※6)の認可基準の広告比率(現在紙面の50%以下)の引き下げや広告税の検討をうたっている。このほか廃車、プラスチック、廃棄タイヤ、空きかんなど廃資源の回収再生利用の促進が指摘されている。

※1 ノンクラッチ車…クラッチペダルがないマニュアル(MT)車のこと。ノークラとも。70年代は「ノン」という言葉がはやっていたそう。作りがシンプルなので(その分操縦者が細かく操作しないといけない)、燃費が良く、その上に値段もオートマチック(AT)車よりも安いらしい。

※2 倉石忠雄(1900~1986年)…1947年衆院選に自由党から立候補し、初当選(以後連続14回当選)。1955ー56、58-59年労働大臣。1966ー68,70ー71,73ー74年農林大臣。1979ー80年法務大臣。1983年引退。政界きってのダンディ男と言われた。

※3 小沢太郎(1906~1996年)…田中義一の娘婿。1953ー60年山口県知事。任期途中で辞職、1960年衆院選に自民党で出て当選するも、1963年時は落選、1967年に再当選を果たす。政務次官を歴任した。1977年、参院選に鞍替えして当選。1983年引退。

※4 前田正男(1913~2008年)…1947年の衆院選に無所属で出て当選。のち自民党結成に参加。1976年、ようやく科学技術庁長官となるが、その年の衆院選に落選し、3か月しか務められなかった。1980年に復活当選を果たす。1983年引退。

※5 小笠公韶(こうしょう)(1904~1985年)…1952年衆院選に出馬も落選、翌年当選を果たす。政務次官や、内閣官房副長官を務めた。1971年、参院選に鞍替えして当選、1期務めた。

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