〇2022年参院選「一票の格差」3.03倍も最高裁「合憲」
「1票の格差」問題については、以前取り上げたので、そちらを参考してください<(_ _)>
まぁ、簡単に言うなら、神奈川県は福井県よりも12倍投票できる人がいるのに、なんで代表者の数は12倍じゃなくて4倍なの?(福井県:1人、神奈川県:4人)なんで代表者の数を12人にしないの?神奈川県の発言力3分の1じゃん、福井県ズルくね?…ということですね(;^_^A
さて、東京・神奈川・青森・岩手・宮城・福島・山形の有権者が、参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分は憲法の保障する1人1票の原則による人口比例選挙に反しているので、選挙も無効であると訴えた裁判で、
最高裁は、
①合区によりそれまで5倍以上あった「1票の格差」が3倍程度まで縮小され、その後は3倍程度で推移してきており(16年 3.08倍→19年 3.00倍→22倍 3.03倍)、今回、縮小が拡大に転じたとはいえ、その差が大きく拡大しているとは言えない。
②一方、合区となった都道府県で、投票率の低下や無効投票率の上昇が続けてみられることは、「有権者において、都道府県ごとに地域の実情に通じた国会議員を選出するとの考え方がなお強く、これが選挙に対する関心や投票行動に影響を与えていること」がわかるので、議員定数配分を見直すにあたっては、慎重に検討する必要がある。
③以上から、制度の見直しには「なお一定の時間を要する」ので、今回の選挙において制度が見直されなかったために、格差がわずかに拡大したということは、「憲法の投票価値の平等の要求に反するものであったということはできない。」
…という判断を下しました。
最高裁判所裁判官15人のうち11人は同意見で、残る4人のうち3人は賛成だが理由が異なり、1人は反対意見だった。
別の理由はどのようなものだったか見てみると、
①三浦守氏
・3倍を超える投票価値の不均衡は、1人1票という選挙の基本原則を考えると、決して見過ごすことはできない。
・総議員数を増やせば格差が是正できるが、憲法に議員を増やしてはならないとは書いていない。参議院の議員数(248)は、衆議院の議員数(465)と比べ相当に少ないので、増やす余地があるといえる。
・憲法には都道府県を選挙区の単位にしなければならないとは書いていない。有権者が少ないところは広域の選挙区にして、1つの選挙区で必ず2人以上が選ばれるようにすれば、1人しか当選しない時と比べれば、選挙に対する関心の低下は避けられるのではないか。
②草野耕一氏
・最大格差を投票価値の不均衡の論点とするのは正しくない。収入の最も高い人と収入の最も低い人を比べて、お金の配分が不均衡だというようなものである。それよりもジニ係数(格差を測る指標。0から1の間で表され、1に近づくほど格差が大きい)を論点とすべきである。今回の選挙のジニ係数は0.0873で、前回選挙の0,0849と比べほとんど変化のないことがわかる(あっても微々たる変化)。しかし衆議院議員選挙の0.0619と比べると高く、外国の選挙と比べても高くなる場合があることから、14条違反だという疑いの気持ちを引き起こすのには十分な数字だといえる。
・しかし、選挙は平等にすることが目標ではなく、政治上の諸問題をより良く解決できるように考えなければならないものである。
・議員定数を増やせば解決できるかもしれないが、国会の活動の効率性は悪化する。
・議員定数の不均衡が違憲と言うなら、それによって国民が不利益を受けていることを証明する根拠を示さなければならない。
③尾島明氏
・今回の選挙の議員定数の不均衡は違憲状態にあったと考える。
・憲法前文には、議員は正当な選挙で選ばれる、とあり、憲法43条には、議員は、公正かつ平等な選挙によって選ばれる、とある。今回の選挙のように、ある選挙区の有権者の投票価値がある選挙区の3分の1しかないというのは、正当な選挙と言えない。
・合区を進めると選挙への関心の低下が見られたというが、これは合区のためかどうかははっきりしていない。合区による心配をするならば、投票価値の格差があることで、選挙への悪影響が起こることも心配しなければならないのではないか。
④宇賀克也氏
・今回の選挙の議員定数配分は違憲であるといわざるを得ない。
・公共の福祉でやむを得ず一定の不均衡を認めるとしても、同じ価値の投票権が保障され、それが国会の民主的正当性につながっていることを考えれば、投票価値に著しい不均衡が生まれることは解消されなければならない。
・今回の選挙の1票の価値の不均衡は、憲法上許される範囲を明らかに超えている。
・投票価値が損なわれていることは重大な基本的人権の侵害である。投票価値の低い地域(人口集中地域)が財政上の不利益を受けていないにしても、公共の福祉による制約として正当化できる範囲を超えた投票価値の不平等は認められるわけにはいかない。
・選挙制度の改革が難しいかどうかで合憲か違憲かを判断してはならない。
・3倍を合憲とすれば、今後の格差是正の動きが弱まることにつながる。
…「違憲状態」や「違憲」の意見は、格差の解消を目指していますが、
もし、格差が完全に解消されるなら、有権者の多い東京・神奈川・大阪・埼玉・愛知・千葉・兵庫・北海道のたった8都道府県で選ばれた議員だけで過半数を達成してしまいます(◎_◎;)
そうなると、政治家は、無いとは思いますが、極論、「この8都道府県は税を半分にする、残りの都道府県は税を2倍にする」という政策を実行する!という公約を掲げれば選挙に勝ててしまうわけです。
ますます都市部と地方の格差が拡大し、地方はますます苦しくなります。
1票の格差の解消は都会・地方の格差の拡大を生むのです。
ジョン・スチュアート・ミルは、『自由論』で、「多数者は少数者の抑圧を望むかもしれないから、多数者の専制に対して予防策が必要である」「多数派と少数派では、援助を受け優遇されるべきは、少数派の意見である。少数派は多数派よりも利益・幸福が下回る可能性があるからである」と述べています。
法政大学院の白鳥浩教授は、人口面だけを考えて選挙改革を進めれば、少数者は議員を選ぶのが難しくなり、量的な不平等は解消できるかもしれないが「質的な不平等」が生まれる、「選挙は民主主義のための制度であり、数だけを議論しているわけではない。格差是正と地方の民意のバランスをどう取っていくのか、考えるべき時だ」と述べています。
〇野党の考えた緊急経済対策
立憲民主党・日本維新の会が緊急経済対策を発表。
立憲民主党
6か月間を対象に、
・年収水準の3倍以下の世帯(全世帯の6割にあたる)に、インフレ手当として3万円を支給。
・「トリガー条項」(1リットルあたり約25円のガソリン税減税)の発動
⇩2024年度から行われる新制度を、前倒しで今すぐ実施する
・児童手当を拡充し、高校生まで一律月額1万5千円を支給する。
(現在の児童手当は3歳まで1万5千円、中学生まで1万円(第3子以降は1万5千円)
・給食費無償化
日本維新の会
来年3月まで、
・社会保険料を3割減免(低所得者は半減)。
・消費税は8%とし、軽減税率を廃止。
・「トリガー条項」(1リットルあたり約25円のガソリン税減税)の発動
また、
・給食費無償化の前倒し実施
立憲民主党案には、「3万円はショボすぎる」「減税をしてほしい」という意見もあがっている。これに対し、泉健太代表は、X(旧Twitter)で「「税収増は全部還元」とか「もっと景気刺激策を」とかではない。 やり過ぎは一層の物価高を招きかねない。生活支援に狙いを定め、物価高に見合う額での対策が正しい。」と述べている。
〇中国 GDP成長率4.9%に鈍化
中国国家統計局は18日、2023年7~9月の国内総生産(GDP)の伸びが、前年同期と比べ、4.9%増加したと発表した。
4~6月の6.3%よりは鈍化した。
…というが、中国は去年の4~6月はだいぶ伸び率が低かったので、4~6月の6.3%増というのは割り引いて考えなければならない数字のため、実際は増加していると見てよいでしょう(;^_^A
それでも、中国政府は年間で5%増を目指しているのですが、4~6月期を除いて5%に達していません。経済が苦しいことには変わりはないのですね。
近年の中国の経済成長を牽引してきたのは不動産部門でしたが、中国不動産業界最大手の碧桂園や恒大集団が債務不履行(借りた金が返せなくなる)になるなど、不動産バブルは崩壊し、1~9月で―9.1%と足を引っ張っています。
中国当局も、「外部環境はさらに複雑で厳しくなり、国内需要もまだ不足している。経済が好転する基礎を固める必要がある」と発表しています。
〇政府 観光地混雑時に鉄道運賃値上げ オーバーツーリズム対策
オーバーツーリズム(観光公害)…観光地に人が集中することで、ごみの増加などの環境被害や公共交通機関の混雑が起こり、地元住民が苦しむこと。
この対策として、政府は、混雑度に応じた値上げを認める制度を、観光シーズンや観光客の多くなる曜日・時間帯に実施することを認めることを決定した。
また、観光客向けの急行バスを導入しやすくするよう制度も緩和することに決定。
…しかし、運賃の値上げは地元民も困りますし(外国から来た人は高くても鉄道を使うと思う)、バスの運転手も不足してるんですよね…(;^_^A
外国では、例えばイタリアの人気観光地ベネチアは、混雑時期に、日帰りの観光客に対して、入場料5ユーロ(約790円)をとることにしています(日本でも、厳島神社がある宮島も訪問税100円を徴収している)。しかし、5ユーロでは大した効果は無いのではないか、との批判もあります。
アメリカでは、グレイシャー、ロッキー、ヨセミテ国立公園では、時間指定の入場チケット制を導入(日本でも熊本県小国町鍋ケ滝公園の入城に事前予約制を導入)しています。しかし、この作戦は決まった区域に対しては有効ですが、都市全体が観光地の場合では難しいでしょう(-_-;)
外国人の宿泊の7割は三大都市圏に偏っているため、政府は「地方部への誘客を一層強力に推進する」としていますが、地方への分散が何につけても大事なのですよね(;'∀')
都会の人にはどしどし地方に行ってもらいましょう!地方でお金を使った三大都市圏の人にはポイントがつけるとか、減税するとか…難しいですかねぇ…(;^_^A
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