10月6日、政府は、配達の際に玄関前などに荷物を置く「置き配」を選んだ人に通販サイトなどで使えるポイントを付与する制度を今後実施することを発表しました。
なぜ政府は「置き配」に対しポイント還元をしようとしているのでしょうか?
実はそれには、来年以降の日本に訪れる大問題が関わっていたのです…(◎_◎;)
※マンガの後に補足・解説を載せています♪
〇「2024年問題」
全日本トラック協会の「日本のトラック輸送産業現状と課題」によれば、輸送・機械運転従事者数は、令和元年(2019年)の87万人をピークに、令和2年85万人、令和3年84万人と減少を続けている。 年齢階級別就業者構成比は、平成22年(2010年)では40歳未満:38.7%、50歳以上:33.7%であったが、令和3年(2021年)では40歳未満:24.1%、50歳以上:45.2%と、急速に高齢化が進んでいる。若者がトラック運転手になりたがらないのは、低賃金・長時間労働が理由で、年間所得額は全産業平均に対し、大型トラック運転手は5%、中小型トラック運転手は12%低く、年間労働時間は全産業平均に対し、大型トラック運転者は432時間(月36 時間)長く、中小型トラック運転者は372 時間(月 31 時間)長い。
大変な仕事なのに給料が低いのでは、若者はトラック運転手になりたがらないだろう(-_-;)
それに追い打ちをかけるのが「働き方改革関連法」で、2024年4月1日からトラック運転手の残業時間が年960時間に制限されることにより、①1日に運べる運送量が減少する②残業代が減り、さらに運転手の収入が減少する(残業時間が960時間を超える長距離ドライバーが「いる」と答えた事務所は48.1%も存在する。残業時間が規制されると、年間収入が最大で60万円減少する運転手もいるという)…という問題が生じることになる。これを「2024年問題」という。
このまま何もせず手をこまねいていると、輸送力は2024年度には14%、2030年度には34%も減少するという。
そこで政府は10月6日に「2024年問題」の対策として「物流革新緊急パッケージ」をまとめた。
①物流の効率化
・物流施設の自動化・機械化の推進
・貨物列車・フェリーの輸送量を10年で倍増
・SA・PAにおける大型車駐車マスの拡充や駐車マス予約制度の導入
②荷主・消費者の行動変容
・コンビニでの受け取り・置き配・ゆとりある配送日(3日後~)を選んだ場合、ポイント付与→現在の再配達率12%を6%に減らすことを目指す(2021年度、再配達は11.8%にのぼった。再配達の労力はドライバー6万人分に匹敵し、再配達分のトラックから出る二酸化炭素は25万トンになるという。これは25mプール25万杯分で、日本から出る二酸化炭素量の0.02%にあたる[2021年度])
…「誰かの犠牲の上に成り立つ便利」は、見直されなくてはいけない。消費者が意識を変える必要がある。そもそも、自宅に配達するシステムが非効率的に過ぎる。(置き配も盗難の恐れがあるし)自宅配達をやめ、ある程度の範囲ごとに荷物受け取り所(郵便局でもよい)を作り、客はそこに荷物を取りに行くシステムにすれば、運転手は荷物受け取り所に荷物をおろすだけでよくなり、労働時間は大幅に減るのでは。税金の封筒などは、自分が注文したものではないから、自宅に届けられればいいと思うが、自分で注文した分は、少しの面倒を我慢して、自分で受け取りにいかなければならないのではないか。
Yahoo!のコメント欄を見ると、次のような意見があった。
・政府の「ポイント付与」には違和感。頼む側が得をするのは変。
・コンビニ受け取りでもポイント付与では、コンビニ店員がますます大変になるのではないか。
・再配達は有料にすればよい。
・配達しなくてもいいから営業所でいつでも引き出せるシステムを作ってほしい。
・ポイント付与するならば値段に応じてにすべき。配達ごとであれば、まとめて注文をせず、小分けして注文する人が増える。
・置き配は盗難が心配。ポイント付与よりまず、PUDO(宅配便ロッカー)の設置を支援した方が良いのではないか。
・自宅への宅配はウーバーイーツのようなシステムを取り入れてもいいのでは?ウーバーイーツの成り手は多いのだから。
・元配達員ですが、置き配も写メを撮らなきゃいけないし、雨の日は写真が暗くて見えにくい、などとクレームを受ける時もあり、面倒でした。
・再配達有料にすると、アパートやマンションの場合は消防法で廊下に荷物を置けないことになっているので、置き配ができず再配達になりやすく、料金を取られてしまう可能性が増える。アパート・マンションごとに宅配ボックスを設置すべき。
・再配達有料にすると、在宅していたのに再配達料をとられた、とトラブルになりそう。実際に、2・3回チャイムを鳴らして出なかったので不在票を入れて置いたら、「在宅していたのに」とクレームの電話があったことがある。
・友人がAmazonの宅配ドライバーになったが、「1日200件の配達はキツイ」と1年未満でやめてしまった。
③商慣行の見直し
・物価動向の反映や荷待ち・荷役の対価等の加算による「標準的な運賃」の引き上げ
→現在、多くのトラック運送業事業者は、適正な運賃を受け取ることができていない。残業時間増加につながる「荷待ち」(荷主の都合[データ処理が済んでいない・倉庫側の調整不足で商品の準備ができていないなど]で順番待ちをさせられること)は、平均1時間45分も存在する(3時間以上の荷待ちも15.1%もある。中には午前10時から午後8時まで待たされたケースも)が、荷待ち時間に荷主から対価は支払われていなかった。他にも、「積み込み」「取り卸し」時間も対価が無く、高速道路利用料・燃料価格高騰分も「運賃」には含まれていなかった。例えば燃料価格が1円上がるだけでも、トラック業界全体で150億円も負担が増えるという。他にも、荷主から仕分け作業やシール貼り作業を無償でさせられることもあるという。)
・適正な運賃の収受、賃上げ等に向け、2024年の通常国会で関連法の改正を目指す
→荷主に荷待ち時間短縮など効率化に向けた計画策定を義務付ける。
…他にも荷主の問題としては、小型の商品なのにそれよりも大きなサイズの箱で梱包(「ぶかぶか梱包」)する、というものがある(ぶかぶか梱包は40%にも達するという)。ぶかぶか梱包だと、1度に運べる量が減るだけでなく、本来は郵便ポストに収まるサイズだったのに入れられず、再配達になってしまうというケースも多いという。そこで、放送業界の老舗、ロックを中心に、「ぶかぶか梱包をやめようプロジェクト」が立ち上げられた。主な活動内容は、「ぴったり梱包」に適した資材や梱包方法の提案など。2023年10月から活動を開始する。
運送業や農業などは、人々の生活を支える大切な仕事なのに、待遇が悪く、収入が少ないので、若者で成り手が少ない。「便利で当たり前」「安くて当たり前」などと消費者が思っている限りは、これらの仕事に就く人は減っていくばかりだと思う。
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