社会って面白い!!~マンガでわかる地理・歴史・政治・経済~: 旧国名が市町村名!~岐阜県編~「飛騨高山」は飛騨市と高山市のこと?

2023年10月5日木曜日

旧国名が市町村名!~岐阜県編~「飛騨高山」は飛騨市と高山市のこと?

 市町村合併などを機に、新市町村名に旧国名をつけるパターンが

ほぼ全国的に見られます。

前回は大阪府編をやりましたが、

今回は、第7弾、旧国名が「美濃・飛騨」の岐阜県編です!

※マンガの後に補足・解説を載せています♪


〇美濃市

歴史は古く、明治時代末期の1911年に上有知町から「美濃町」に改名しています。

「美濃町」に改名したのは「美濃和紙」の産地であることに由来するそうです。

その後、1954年に洲原村・下牧村・上牧村・大矢田村・藍見村・中有知村が合併して「美濃市」に。

しかし、「美濃市」という名前は適切なのでしょうか…(◎_◎;)

美濃国の国府があったのは、現在の垂井町ですし、中心地は岐阜市です。

中心であった過去が無いのに、「美濃」を独占する名前を名乗るのは、どうなんでしょうか…(;^_^A

武儀(むぎ)郡に属しているのだから「武儀市」で良かったのでは…?

(美濃氏ができた翌年の1955年には中之保村・富之保村・下之保村が合併して「武儀村」となっている)

平成の大合併の際に、関市との合併も持ち上がりましたが、

「中濃地域市町村合併検討協議会」の議事録によれば、

関市は「関市に編入合併、市名も関市」という考えで、美濃市は「新設合併、美濃という名前を尊重してほしい」という考えで折り合わず、両市の合併は消滅しています(◎_◎;)

美濃市・関市にまたがる東海北陸自動車道・東海環状自動車道のジャンクションの名前は「美濃関ジャンクション」なんですけどねぇ…。

〇美濃加茂市

1954年、太田町・古井町・山之上村・蜂屋村・加茂野村・伊深村・下米田村と三和村・和知村の一部が合併して美濃加茂市となった。

(三和村の残りは川辺町、和知村の残りは八百津町)

市名の由来は加茂郡に属していたからだが、「美濃」がついているのは、

美濃加茂市が誕生する約1か月前に新潟県で加茂市が誕生していたため。

2003年、他の加茂郡の町村(坂祝町・富加町・川辺町・七宗町・八百津町・白川町・東白川村)と合併する話が持ち上がったが、美濃加茂市の反対(市民意向調査で「賛成:36.4%」「反対:54%」)により実現しなかった。

他の加茂郡の町村は「美濃加茂市に編入合併」「市役所は美濃加茂市」という美濃加茂市有利な条件をのんでいたのになぜなのか。

その理由としては、

①美濃加茂市に工場が増加し、経済が好調であったため、無理に市町村合併をする必要性を感じなかった。

人口5万人[当時]の美濃加茂市の地方債残高が187億円に対し、残りの町村が人口5.8万人で負債が241億円あったことから、他町村の負担を抱えたくない、という思いがあった。

(確かに、財政力指数を見ると美濃加茂市は岐阜県42市町村で7位に対し、残る7町村は坂祝町:23位、川辺町:31位、富加町:32位、八百津町:33位、七宗町:40位、白川町・41位、東白川村:42位と低い)

…といったことが挙げられるそうです(;^_^A

〇飛騨市

正式な漢字は飛「驒」。

2004年、少子高齢化・過疎化問題に対応するため、古川町(16135人)・神岡町(10827人)・河合村(1322人)・宮川村(1140人)が合併して誕生。

※旧宮川村には村おこしの一環で1994年に「飛騨まんが王国」が作られた。漫画図書館が併設された宿泊施設。全国から寄付された漫画42000冊をおさめる。旧宮川村のホームページには、「岐阜や富山の人じゃないと「飛騨まんが王国」ってどこにあるかあんまり知らないよね。何をかくそう、私も知らなかったんだぁ。(苦笑)」という自虐コメントが書かれていた。

合計して29424人と、市に昇格するための条件、30000人以上をギリ満たしていなかったのですが、市になることが認められました(;^_^A

飛騨市の人口はその後、2023年8月1日には21290人まで減少しています💦

先細りは見えていたので、高山市と合併すればよかったのでは…?と思うのですが、

調べてみるとどうやら、4町村は高山市に対して「新設合併」を求めたのに対し、高山市は4町村の「編入」(吸収合併)を求めたため、意見が折り合わず、4町村だけで独立して合併することになったようですね(◎_◎;)

さて、4町村は合併する際に新市名を公募したところ、

飛騨(1138票),吉城(225票),さくら(73票),北飛騨(70票),奥飛騨(54票),朝霧(33票),飛騨吉城(32票),飛騨古川(28票),古川(26票),北飛(22票)…という結果となりました。

「吉城」は合併する4市町村が「吉城郡」に含まれていたためです。

「さくら」は、古川町が舞台の1つとなった2002年の朝ドラ「さくら」に由来しています。

「朝霧」は、古川町に「朝霧の森」があったり、秋に霧が多く、「朝霧たつ都」と呼ばれていたりしたことに由来。

ちなみに、「飛騨」の1138票には、「ヒダ市」も含まれています(;'∀')

「飛騨市」を選んだ理由として、

・伝統的な感じがして良い。

・親しみがあり、わかりやすい。

・ぬくもりがあり、好きだから。

・是非とも後世につたえたい名称だから。

・歴史の重みを感じる。

・飛騨の伝統と文化を伝えたい。

・飛騨が好きだから。

・全国的に周知されているので良い。

…というのが挙げられています。

しかし、「飛騨市」と決まる際にはひと騒動あったようです(◎_◎;)

どのような騒動だったかというと、

周辺の飛騨地域の市町村が「地域の総称である”飛騨”の名称を、特定地域で使うのはいかがなものか」と懸念を表明したり、

高山市議会が「飛騨市」について「よく考慮を」と申し入れをしたり、

「『高山市と飛騨市にみる‘市名とブランド’の関係性』に係視察報告書(篠山市)」によれば、「高山市から相当のクレーム」があったりした、というものです💦

飛騨国の中心部分を担っていたのは高山市のほうで、国衙も高山市の所にあったと言われています。

飛騨の新聞は、社説で、

面積は飛騨地方の4分の1なのに「飛騨市」を名乗るのはおかしいのではないか、

長年親しんでいる「吉城」にすればいいのではないか、

「飛騨」の知名度・ブランド力に頼ろうとしているだけなのではないか…と批判しています(◎_◎;)

先に述べた「『高山市と飛騨市にみる‘市名とブランド’の関係性』に係る視察報告書(篠山市)」には、

高山市では、「飛騨市との関係であるが、飛騨市ができてから、飛騨高山は飛騨市を指すのか、高山市を指すのかという問い合わせは増えている。」

飛騨市では、「飛騨高山と誤解されることもあり、高山市と間違えて問い合わせがあったという事例もある。」

…という問題が発生している、ということが書かれています。

一方で、「飛騨市という市名が観光客数や農産物の売り上げに貢献したかと言われると、そういう事実はない。」とあり、「飛騨市」にしたことによる効果はさほどなかったようです(;'∀')

「飛騨市」では独自色も薄れてしまうし、やはり「吉城市」…もしくは「飛騨吉城市」でよかったのではないかなぁ…(-_-;)

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