「蹴鞠」といえば、今川氏真のイメージが強いのですが、
実は『言継卿記』に貴重な信長の蹴鞠シーンが載っているのですね😮
以前に紹介しましたが、天文2年(1533年)に織田信長の父、織田信秀が蹴鞠を教えてもらうために京都から飛鳥井雅綱を尾張に招いた、ということもありましたから、信長はこの時に蹴鞠を学んだ信秀か、その家臣の誰かから蹴鞠のやり方を教えてもらっていたのでしょう。
さて今回は、この蹴鞠に関してちょっとした事件が起こった、というお話になります😓
※マンガの後に補足・解説を載せています♪
●(承前)率分関一件
以前にも述べましたが、山科家・万里小路家が持つ率分関に対し、木下藤吉郎秀吉の配下の者が横領行為を行う、という事件があったので、心配になった山科言継は再度信長に率分関を保証する朱印状を出してもらう事にしました。
以下、『言継卿記』の記述に拠ってこの件がどのように推移したかを見てみたいと思います。
4月6日条
(山科言継は)万里小路黄門(輔房。永禄11年[1568年]12月18日に権中納言となっていたため、漢名で「黄門」と書かれている。この時27歳)・広橋兼勝(祖父が2年前に、父が1年前に死去。この時11歳)と共に3人で織田弾正忠(信長)のもとを訪れた。しかし、内に籠もって出てこなかったので、二条城の普請の様子をしばらく見物して帰った。率分関を保証する朱印状を出してもらうために信長のもとを訪れたのであった。申の刻(午後4時頃)に再び信長のもとを訪れ、対面することができたが、とりとめのない話をするばかりで、収穫は無かった。
4月7日条
早朝、(山科言継は)昨日の3人で織田信長のもとを訪れた。信長は蹴鞠をしており、白服(染めていない白地の布で作った衣服)で(言継たちと)対面した。先に大津伝十郎(信長側近)を通じて用件を伝えていたが、信長はこれを了解し、今まで行われていたように執り行うように、と和田惟政を通して公方様に伝えるがよい、との返答があった。そこで、和田惟政が宿所としている妙蓮寺に向かい、公方(足利義昭)の書状を出してもらえるように頼んで帰途に就いた。
4月8日条
万里小路輔房と共に武家(足利義昭)のもとを訪れ、率分関についての女房奉書を示し、将軍の命令書を出してもらうように要望したが、大和治部少輔(孝宗。義昭側近)からは、この件は信長が廃止したことであるので、まず信長の命令書をもらうべきである、と返答があった。
4月13日条
烏丸一品(光康。権大納言。「一品」は臣下の最上位である従一位のこと。この時56歳)・同弁(光宣。右中弁。光康の子。この時20歳)・万里小路(惟房。輔房の父。権大納言。この時56歳)・同黄門(輔房)・予(山科言継)で信長のもとを訪れた。皆訴訟のことで信長のもとを訪れたのであり、万里小路は山国・小野・細川の荘園(別項で後述)等の事で、烏丸は摂州(摂津)の件(信長は19日付で次の内容の朱印状を出している。「(将軍義昭は)今回の忠義に報いて、烏丸殿の摂津の領地と、近年、大和[奈良県]の上牧で失っていた領地の分を、改めて保証する、との命令を下されたが、信長も、これを保証する」。この件の事であろう)で、予は率分関の事で信長のもとを訪ねたのであった。しかし、信長は蹴鞠で足を痛めた(「鞠に足損」)という事で対面することはかなわなかった。
4月15日条
烏丸父子・万里小路亜相(「亜相」は大納言の事)・予など、妙覚寺にいる織田弾正忠を訪ねた。若州(若狭)・丹州(丹後・丹波)・摂州の者たちが多くやってきており、非常に忙しい様子であったので、しばらく仏殿に待機し、代わりに使者を残しておいた。烏丸は摂津の領地についての事で、万里小路と予は率分関についてのことでやって来たのであったが、これらの件は具合よくまとまった。また、万里小路は禁裏御料所である山国・小野・細川等についても裁決を求めに来たのであったが、これもだいたい具合良くまとまることになった。
このようにして、山科言継は朱印状を得ることに成功したのですが、この件で興味深いことは、信長は将軍に命令書を出してもらうようにしよう、と早めの決断を下したのに、将軍側はこれは信長が以前に取り扱った案件だから、信長の朱印状を先に得るように、と言って差し戻した、ということです。お互いに顔を立てて、遠慮しあっている、という事なのでしょうか。当時の二重権力状態がうかがえますね…。
それにしても、13日に信長を訪れた時に、蹴鞠で足を負傷した、といって面会が断られた、というのは、かなりの確率で仮傷でしょうね😓
『言継卿記』13日条には、この日の晩、信長が妙覚寺に居所を移した、とあり、おそらく引っ越しの準備でてんやわんやだったので、面会しなかったのでしょう。
引っ越すため忙しい、と言うより、足を負傷したので会えない、という理由の方が失礼でない、と信長は判断した、ということなのでしょうか…😓
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