社会って面白い!!~マンガでわかる地理・歴史・政治・経済~: ドキュメント石油危機9 1973年10月17-18日~鼻血も出なくなる!?中東諸国の作戦第二弾

2022年10月14日金曜日

ドキュメント石油危機9 1973年10月17-18日~鼻血も出なくなる!?中東諸国の作戦第二弾

不思議なことがあります💦

前回のマンガは10月18日の福井新聞の記事をもとにしたものです。

今回のマンガは10月19日の福井新聞の記事をもとにしたものです。

しかし、どちらもクウェートで17日に発表されたことが記事になっていると福井新聞に書いてあるのです‼😱

なぜ二日に分けて!?

しかし、『中東戦争全史』などでは、16日に1度目の発表(石油の値上げ)を発表し、

17日に2度目の発表をした、と書いてあります。

なんやねん…(;^_^A

当時は日本時間で書いていたんでしょうか??

では、17日に発表された内容はどのようなものだったのか?

今回はそれについて見ていきます!

※マンガの後に補足・解説を載せています♪


〇アラブ石油輸出国機構(OAPEC※)緊急宣言の内容(全文)

一、アラブ諸国は石油輸出によって世界の繁栄と経済発展に参加し、アラブ諸国の石油生産がこれら諸国の経済情勢及び将来の予想される需要が必要とする限度を超えているのにもかかわらず、これら諸国は国際協力と消費者の利益のため、自国の利益を犠牲にして生産を増加し続けてきた。

一、アラブ産油国の広大な地域が1967年6月1日※※にイスラエルによって武力で占領された事はよく知られた事実である。イスラエルは国連決議を無視し、アラブ諸国、あるいは他の平和愛好諸国のすべての平和の呼びかけに挑戦して占領を続けている。

一、国際社会は国連諸決議を履行し、侵略者が侵略の成果をあげ、あるいは他の諸国を武力によって占領するのは許さないことを約束している。それにもかかわらず、主としてアラブの石油を消費している大部分の大工業国は、その約束を尊重していることを示すいかなる手続きも取っていない。逆に、これら諸国の一部を占領を支持し、特に米国は現在の戦争前及びその最中、できる限りのあらゆる手段でイスラエルを極めて活発に支持しているが、この情勢はイスラエルの傲慢さを助長しイスラエルが法的権利と国際法の基本原則を無視し続けることを可能にしている。

一、イスラエルは1967年にスエズ運河閉鎖の原因を作り、その結果、欧州経済は被害を受けた。現在の戦争で、イスラエルは地中海東部の石油基地を爆撃し、欧州は新たな石油供給不足に苦しんだ。我々の法的権利がこのように無視され、それが米国に後押しされ、支持されているため、国際社会が占領された我々の領土からイスラエルを撤退させ、米国のイスラエルに対する無制限の支持の結果として、欧州工業国が支払っている高い代償を米国に認識させることによって、この情勢を是正しない限り、アラブ諸国はその経済的必要をはるかに超える量の石油を生産して経済的犠牲を払うことをやめることを決めた。これはイスラエルがそうさせたものである。

一、これらすべての理由から、アラブ諸国石油相は10月17日クウェートで会合し、石油生産を9月の生産から毎月5%を下回らない範囲で直ちに削減することを決定した。イスラエルが1967年6月に占領したすべてのアラブ領土から完全に撤退し、パレスチナ人の法的権利が回復されるまで、毎月、前月同比率の削減が実施される。

一、アラブ諸国石油相は世界諸国民、特に米国民に対し、帝国主義とイスラエルの占領に対する我々の戦いで我々を支援するよう呼びかける。アラブ諸国石油省は他のすべての諸国民と協力する意思があり、世界が我々に同情し、侵略を非難することを条件に、我々の側のあらゆる犠牲にもかかわらず、世界が必要とする石油を供給する用意があることを確認する。

(※アラブ石油輸出国機構[OAPEC]OAPECは石油関連事業などビジネス活動が中心。OAPECは1968年、クウェート・サウジアラビア・リビアにより1968年に結成。のちにアラブ首長国連邦・アルジェリア・イラク・エジプト・カタール・シリア・バーレーンが加わり、加盟国は10か国。本部はクウェートの主とクウェートシティ。

石油輸出国機構[OPEC]は石油産出国の利益を守ることを目的として1960年に結成。こちらにはOAPECと違いイラン・アンゴラ・ナイジェリア・ベネズエラ・ガボン・赤道ギニア・コンゴ共和国が加盟しており、エジプト・カタール・シリア・バーレーンが入っていない。加盟国は13カ国。本部はなんとオーストリアのウィーン。

OPECは純粋に世界の産油国が参加しており、

OAPECにはアラブの石油に関係する国々が参加している感じだろうか(゜-゜)

シリアなどは産油国ではないがヨーロッパ向けの石油の輸出港があるし。)

(※※第三次中東戦争は1967年6月5日~10日にかけて行われており、明らかな誤り。おそらくイスラム圏で使用されているヒジュラ暦を新聞?が訳す際に間違えたのか。例えば1967年6月10日はヒジュラ暦だと1387年3月2日となる)

〇電力業界に値上げの機運 来年、7社が申請? 原油の価格アップで

アラブ産油国の原油大幅値上げと供給削減の決定は、大口需要家であり、同時にコスト上昇による経営悪化に悩んでいる電力業界に強い衝撃を与えている。

産油国の決定の結果、国際石油資本がわが国など消費国に売り渡す原油価格は一バレルあたり1ドル、値上げ率にして40%程度に達する見通しだ。

電力業界はこれにより現在1キロワット時あたり1円60銭ー1円90銭の燃料費が同2円以上にはね上がり、燃料費の約20%を占める燃料費高騰で経営悪化は決定的な段階に入るとしている。

すでに北海道電力、北陸電力、東北電力などが来年に値上げを申請する意向をもらしているが、今回の原油価格の大幅値上げで関西、四国電力以外の7電力会社が来年次々に値上げ申請に出る可能性も出てきた。

加藤電気事業連合会会長(中部電力社長)は18日「電力業界はまず燃料を確保に全力をあげる。電力不足から産業の操短を招けば、物価高からインフレをさらに加速することにもなる。燃料費は石油会社との交渉になるが、電力業界としては”鼻血も出ない”段階まで値上げしないで済むよう頑張る」と語った。

同日東京で記者会見した東北電力の若林社長は「本年度下期の決算次第だが、燃料費がこれほど高騰すれば、来年は残る七社がそろって値上げ申請の事態になる」と語っている。

東北電力の場合、火力発電の比率は全体の70%。燃料は1キロリットル当たり7000円(47年度)燃料費は1キロワット時1円70銭(同)だが仮に原油が1バレル5ドルとなれば燃料費は1キロリットルあたり12,000円ー13000円、燃料費は1キロワット時12円60銭にも達して、総経費に占める比率は30%近くになるという。

9月末に値上げを認可された関西電力の場合、原価計算の中の燃料費を昭和50年度で1キロワット時3円1銭としている。この場合の中東原油の価格は1バレルあたり2ドル69セントと推算している。しかし今回のアラブ産油国の値上げ通告によれば、この原油価格は4ドル程度まで一気に上がることが確実で、燃料費の高騰は電力業界の予想を大きく上回った。

原油供給削減の影響については「電力の節約について国民に広く協力を求め、停電や産業界の相談などの事態のないよう努める」(加藤電事連会長)としているが燃料費高騰については打つ手がなく、電力業界は参院選(来年7月)電力料金体系の改定という料金値上げに不利な情勢を抱えながらも値上げに走る気配である。

〇産油国の値上げと生産削減 石油業界にダブルパンチ

アラブ石油輸出国機構(OAPEC)が決めた5%の石油生産削減は、前日ペルシャ湾岸6カ国が決定した原油大幅値上げと一体となって、わが国石油事情を直撃する情勢となってきた。

特に、原油値上げの内容が公示価格で70%、実勢価格でも1バレルあたり1ドル以上、40%もの大幅なものであることがわかったため、石油業界は「価格と量の諸面で大きな打撃を受けることになった」と強いショックを受けている。

生産の5%削減により「国際石油資本は自国や子会社への供給を優先するので、日本に対しては最初から10%程度の供給削減を通告してくる可能性が強い」(加藤石油連盟副会長、出光興産副社長)と受け取られている。

このため石油業界の中には、中東戦争が長引くようなら、対策に後手後手に回っている通産省の決定を待たず、石油スタンドで10%程度の販売規制するよう検討を始めたところさえ出ている。

わが国の年間の原油輸入量は、昨年度で1日あたり472万バレルこのうち43.2%はイランを除く中東地域から輸入している。輸入量は本年度は同500万バレルを超え、国際石油資本がOAPEC諸国の生産額削減を理由に中東原油の供給を10%削ってきたとすると、20万バレル以上輸入量が減ることになる。

世界的には原油そのものの絶対的不足はまだない(湯浅日本石油仕入部長)といわれるが、原油確保への強い不安、タンカー運賃高騰などから、国際石油資本が先行きを読んで大幅な供給削減を通行してくる恐れが大きいというのが石油業界の受け取り方である。

OAPEC諸国は「友好国には配慮する」と言っているので、教会には「この配慮にワラにもすがりたい気持ちで期待している」(某外資系石油会社幹部)との声もある。

しかし「日本が対イスラエル政策で明確な態度を表明していない以上、友好国とは見られないのではないか」(加藤石油連盟副会長)との悲観的な見方の方が多い。

原油確保については政府、民間ともに打つ手がないと言うのが実情で、このため石油業界では国内消費の規制について早急な具体化を政府に働きかけ、同時に石油連盟政策委員会でも具体的な方法を検討したいとしている。

(記事は福井新聞縮刷版1973年10月中 10月19日より。)


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