社会って面白い!!~マンガでわかる地理・歴史・政治・経済~: 札差の攻勢、譲歩を重ねる幕府

2026年1月16日金曜日

札差の攻勢、譲歩を重ねる幕府

 ※マンガの後に補足・解説を載せています♪

12月26日、会所の貸し付けのことについて、次のように改めることに決定します。

・今後は、証文に札旦那が借りたいと言っている金の金額、誰に金を貸すのか、決まっている通りに金を返す事を記入し、その札旦那を担当する札差一人の押印の上、会所に証文を差し出せば、この証文に書いてある分の金を直接貸し出すことにするので、この金をもって用立てるようにせよ。返済期間は3季分割の1年返済とする。

・利息の事について、改正のあった当日(9月16日)には、札旦那から25両につき1分(1両=4分なので、25両=100分となり、1÷100=1%、年の利息は12を掛けて12%)の利息を受け取り、10%分は役所に納めるようにと伝え、24日には、町人どもの出資金の利息について、8%(これに加え1%を会所経費として納める)としていたがこれを改め、札旦那からは12%の利息を受け取り、会所へは6%を納め、残る6%は札差の「助成」としてこれを与えることとする。

『札差事略』に、会所から借りた金について、ある札差が返済できなかった場合、同じ組合の者が会所から金を借りていないものであっても返済しなければならないという取り決めにより、組合の者の連判がないと会所から借りられないような仕組みになっており、これが札旦那に金を貸す事を難しくしていた、とあるように、連帯責任制にもとづき、借り入れには組合の者の連印が必要であるという事が、会所からの借り入れのハードルを高くしていたので、これを緩め、連印でなくても、1年で返せる範囲までなら貸し出すことにすることで、会所から金を借りやすくしたのですね。


寛政2年(1790年)1月18日、札差たちは次のような請願を行なっています。

…去年の9月の御改正があって後、札差どもの家業は手狭になり、御屋敷方が支障があっても、金銭を融通することが難しくなってしまいました。以前のように手広く家業を行ない、御屋敷方が支障がないよう、札差どもが家業に精を出せるように、双方が折り合い、関係が長く続くことができるようにするため、仲間一同で次のように仕法の内容を考案しましたので、恐れ多いことでありますが、この内容を申し渡していただけるよう、お願いする次第でございます。

・以前は年利18%で貸し出しをし、その利潤でもって御用立てをしてまいりましたが、この度、古借金の棄捐・利下げを命じられ、一同手元に金が少なくなり、以前のように御用立てをすることが難しくなってしまいました。もちろん御貸附金を拝借しておりますけれども、前々のように手広く家業をしたいと思っておりますけれども、このように利潤が少なくなっては、家業は手狭にならざるを得ません。そこで、御用立金の利息を以前のように(18%に)していただけましたら、自然と貸し出しも好ましい状態になると思われます。

・札差どもは、御扶持方に代わり米を受け取り、これを売却し、御屋敷に送付するなど多岐に渡る仕事を行なっているため、召使いを多数必要とし、そのために費用が多くかかっております。御下げ金・御貸付金を下されましたけれども、恐れながら、9%の利息を上納し、12%で貸し出しを行なっては、千両を用立てたとしても、1年でわずか30両にしかならず、利潤がありません。一方で、諸経費は年に200両かかっているのです。これが、家業がはかどらない理由であります。利息さえ、以前のようにして下されれば、自然と「窮屈」にならず、貸出ができるようになるのです。

・「御足高」「御役料」の御方の御用立金の件ですが、以前の利息にしていただければ、以前のように用事を済ませることができます。

・「御貸付金拝借仕法」の件ですが、札旦那方に御用立てをするという証文に、札差が押印し、これに仲間内の親類の者などの印を加えて提出することで、1人単位で御貸付をして下るようお願い申し上げます。現在のように、組合の者すべての印が必要であると、御金を拝借したく思っても、組合の者が承知しなければ、「御仁慈之御貸付金」が目の前にあるというのに、拝借することができません。仲間一同で借金を返済しなければならない、という事に恐れ入っているので、このような次第になっているのでございます。

…以上のように、利息を以前のようにされ、御貸付金を1人単位で拝借できるようにしてくだされれば、仲間一同、家業がはかどり、御屋敷方が支障のないように取り計らうことができるのでございます。なにとぞ、御慈悲をいただけますよう、願い申し上げる次第でございます。…

この請願に対し、2月19日には札差全員が呼び集められ、次の内容が伝えられています。

・(会所の貸金のうち)町人の出資金より借り受けたもので武家に貸し出す場合、年利12%のうち、6%は会所に納め、残り6%は世話料としてその方どもに与えることになり、出資金の利息が安くなったのであるから、「足高」「役料」を担保にする場合、「仕法通之利足」(つまり12%)で以前の18%の時と同じように、支障なく取引をすること。

・出資金をその方どもに貸し渡す件についてこれを改正し、例えば(札旦那に貸した)年賦金高1000両の手形を会所に担保として差し出すことと引き換えに、400両まで貸し渡すこととする(「四分通拝借金」「四分通御下ヶ金」「四割拝借」「四割御下ヶ金」)。

・武家に用立てる金が不足している場合は、札旦那より受け取った証文にその方どもの印を押し、会所に差し出せば借り受けることができることとする。この借入金手形の押印について、札差仲間の内の親類の印を加えること。

これに対し、札差たちは次のように反応しています。

…この度、御会所金御貸付方について、新規の御定が下され、貸付方法を「御手軽」にお改め下さり、札旦那より受け取った証文に印を押して差し上げれば、その書面にある金額を拝借できるということになり、札差どもはみな経営状況が改善され、札旦那に御用立てする金を滞ることなく用意できるようになり、有難き幸せにございます。…

6月には札差の行事が会所に呼び出され、次の事を命じられています。

…2月に言い渡した通り、天明4年から今年の5月までに貸した金について、利息を6%に引き下げたことを示す証文を会所に差し出すことと引き換えに、今年の夏までに(武士に)貸し出している金額の4割までを会所から貸し出すことになったので、札旦那達の年賦金高を調べ、6月22日に会所に提出するようにせよ。…

7月にはさらに次の内容が伝えられています。

・天明4年から今年の5月までに貸した金について、利息を6%に引き下げたことを示す証文を会所に差し出すことと引き換えに、今年の夏までに(武士に)貸し出している金額の4割までを会所から貸し出すこととする。返済は、15年賦とし、これに利息を加え、期限を守って返済する事。


『札差事略』には、7月時点における札差たちの「四割御下ヶ金」を借りた金額が載せられていて、合計約5.5万両貸し出されていたことがわかります。

ちなみに一番多く借りていたのが十一屋善八と泉屋茂右衛門の2200両で、一番少ないのは町屋伊左衛門の100両でした。借りている者の合計は66人で、約69%が借りていたことになります。借りていない人は棄捐高トップの伊勢屋四郎左衛門などがいるんですが、借りていない人は棄捐高に関わらず、まんべんなく存在しています。堅実に商売してきたかどうかによるのでしょうね。一方で、借りていない人のうち、約43%(13人)が、その後廃業しています。借りることもできないくらい経営状態がひどかった、という事なのでしょうか。

7月28日

役所に札差行事(代表人)を呼び、次のように伝えています。

…盆前の貸出金があった後、札旦那たちの用を取り扱う事、札差ども皆支障なく、精を出してつとめているとお聞きになられ、賞美になられたことを、札差一同に申し渡すようにお命じになられたので、このことをもらさず札差組合の者に伝えること。また、10月の切米も近付いているので、これもまた支障なく取り扱うようにせよ。…

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