社会って面白い!!~マンガでわかる地理・歴史・政治・経済~: ドキュメント石油危機14 1973年10月25日~節約運動は買いだめにつながる!?

2022年12月12日月曜日

ドキュメント石油危機14 1973年10月25日~節約運動は買いだめにつながる!?

 以前、「ドキュメント石油危機7 1973年10月11日-15日~各国の考えた石油節約法」

「ドキュメント石油危機10 1973年10月18-19日~「紙節約国民運動」」で、

日本が節約モードに入ってきたことをお伝えしましたが、

今回は「節約運動」に対する福井新聞の論説欄の指摘から、

当時の「節約」の様子を見ていこうと思います💦

※マンガの後に補足・解説を載せています♪


<今回のマンガに関連する新聞記事>(福井新聞縮刷版1973年10月下より)

〇節約運動の方向づけを考える

節約論調が活発になってきた。政府は先の閣議で「紙節約国民運動」を展開する方針を決め「紙使用合理化懇談会」を発足させて、期限を切らない国民運動として年内にもスタートさせることになった。国民運動を待つまでもなく県内では、紙不足と紙類の値上がりに対処するため、役所や学校、事業場では具体的な節約運動が始まっている。だから、節約論調が活発になってきたと言うより、節約運動が活発になってきたといったたほうが早いかもしれない。

紙だけではない。通産省では、石油の供給量が制限された場合に備えて、休日や祝日のドライブ中止や電力の節約を具体的に決め、年内にも立法化する方針でいる。米国では、エネルギー節約の8項目が財務省から発表になった。洗濯に湯を使わない。乗用車の最高速度は80キロにするなど、かなり細かい内容である。

おそらく、このままいけば、年内にはあらゆる”物”の節約が叫ばれ、具体的な運動が繰り広げられるようになるだろう。それも、日本だけでなく、資源不足に悩む先進各国で、節約の呼びかけが行われることになるだろう。資源がある場合なら別として、明らかに資源が不足してきた現在、それが当然の現代の要請でもあるわけである。

だから「物を大切にしましょう」「無駄をなくし、節約をしましょう」ということには、誰も異論がないし、みんなが協力をしなければならないという事はいうまでもないことである。ただ、そこで気になるのは、節約運動の目的であり、方向づけである。節約運動が何のために行われるものであるのかについて、国民はわかっているのだろうかという疑問がある。

と言うのは、現在起きている節約運動は、物が足りないからであり、それが即、買いだめにつながることによって、節約運動が盛り上がっているところに、1つの不安がある。節約を口にしながら、自分だけは我慢できないという心魂が衝動買いを誘発、節約を盛り上げているわけである。

節約を求めるという意味の中には、精神的なものと物質的なものとがあって、常にそれが本音と建前に分かれようとする。人間の欲望を抑制させながら、物不足と物価高に対処していくには、方程式としては「節約」が明快な答えとして描かれるのだが、果たして、その方程式で全てを片付けることが出来るだろうか。

昔はよく「もったいない」という言葉が使われた。勤倹、節約が国民の思想として統一されていた時代には「もったいない」という意味も通じた。しかし消費は美徳の思想が、ここ10年、消費者の中に入り込んでしまった現在「もったいない」をそのまま節約と結びつけることのできる人は、あるいは、昔の勤倹、節約の思想の持ち主かもしれない。

だから「もったいない」を節約に置き換えることで、節約運動の方向づけをすることには無理がある。確かに昔に比べ生活は、豊かであり、ぜいたくである。しかしそのぜいたくは「したいぜいたく」のためではなく「しなければならないぜいたく」をしているところに、ぜいたくを敵とする考え方だけで節約運動を推し進めることも出来ないし、とらえることも出来ないわけである。

節約には、心情的に反対できないけれども「しなければならないぜいたく」から足が抜けないため結局は、節約と買いだめが連動してしまう。そこが人間の弱さであり、節約運動の持つ不明瞭さ、方向づけのあいまいさであるような気がする。だから、政府が節約運動を国民的な規模で盛り上げれば盛り上げるほど、買いだめを促進し、物さえ持っておればーということでインフレに拍車をかけることが、一番危険といわざるを得ないわけである。

今日からローマクラブの東京大会が始まるが、ローマクラブの創設者であるベッチェイ博士の「このまま世の中が推移すると、私たちの子や孫の代は、とても幸せを手にできない世の中になってしまう。子や孫のために、なんとか住みやすい未来を残したい」という言葉の重さを、じっくりと味わい痛感したうえでの節約運動が盛り上がることに、期待をかけたいと思う。

〇灯油貯蔵にご注意 福井地区消防本部 大量買い込みで警告

冬を控え、値上がりを心配して灯油を大量に買い込む家庭が急増しているため、福井地区消防本部は25日、石油販売業者や町内会に対し「灯油を大量に売ったり買ったりしないよう、もし規定以上の場合は、安全な貯蔵施設を備えなければ処罰されます」と警告書を出し、注意を呼びかけている。

灯油は需要最盛期になると値上がりする傾向にあり、今年は中東戦争によって品不足になる恐れが出ていることもあり、例年になく早めに、大量に買い込む過程が多くなっている。このため、灯油100リットル以上扱う場合の届出義務等が忘れられ、危険な状態のまま、家の片隅に貯蔵されているケースが多いと同本部では見ている。

福井地区火災予防条例では、灯油100リットル以下の場合は、取り扱いの規定がない。しかし100から499リットルになると「少量危険物」として、消防署へ届け出て、貯蔵する場所が安全であるかどうかの点検を受け、危険物があるとの表示もすることになっている。これらに違反した場合は10万円以下の罰金が課せられる。

灯油1かんは18リットルなので、5かんまでは一括して買っても平常の管理でよいが、6かん以上やあるいはドラムかん(200リットル)の場合、規定に従った手続きや措置を取らなければならないわけ。

同本部予防課では「規定以上に買っていても、気が付かなかったり無関心であるため、届け出がないケースがこれまでもあった。今年は最近の買い込み状況を見るとかなり危険な状態の家があるのではないか」と心配している。

このため灯油を扱う石油店、燃料店、農協など販売する側と、買い求める消費者は町内会を通して「暖房用灯油等の貯蔵と違法販売について」との警告文を配り??徹底を求めた。また11月26日から始まる秋の全国火災予防運動期間中はもちろん、それ以前にも各家庭の査察を行う方針。

福井地区消防本部では「物価値上がりの中で、市民が自衛をしようと、安いうちに大量買い込みをする気持ちは理解できるが、逆に火事や爆発などの原因になってはだいなし。安全貯蔵には充分気を付けてほしい」といっている。

※現在は、指定数量(灯油の場合1000ℓ)の5分の1以上を「少量危険物」としているので、200リットル以上保管している場合は、見やすい箇所に危険物を貯蔵し、又は取り扱っている旨を表示した標識と、危険物の類、品名、最大数量や、防火に関し必要な事項を掲示した掲示板を設けなければなりません。
また、2分の1以上(500リットル以上)保管している家庭では、消防長又は消防署長に届出用紙を提出しなければなりません。これに違反した場合、30万円以下の罰金、となっています。

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